プロ10年で中日、西武、楽天の3球団を渡り歩いた元中継ぎ投手の岡本真也氏(45)が、プロ野球開幕を待ちわびている。

引退した翌12年7月、仙台市内に「うどん・もつ鍋也 真」を開業。毎年多くの野球ファンや球団関係者が足を運ぶ人気店になったが、現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響により、4月4日から休業している。飲食店を直撃した売り上げ減などで格闘の日々だが、営業再開に向けて前を向く。

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本来なら3月20日のシーズン開幕とともに、にぎわうはずだった店内が静まり返っていた。岡本氏は「今年は1月から売り上げが伸びて、2月も順調だった」という2020年のスタートも、3月9日にプロ野球の開幕延期が発表されて「3、4月はキャンセルが相次ぎました」と無念の表情を浮かべた。楽天生命パーク宮城でのビジター開幕に合わせて、オリックスの首脳陣らが同店で予定した決起集会もなくなった。宮城県では4月28日の2人を最後に新規感染者は確認されておらず、5月7日に飲食店などへの休業要請が解除された。岡本氏も新レシピを試作するなど、営業再開に向けての準備を進めている。

恩師の故星野仙一氏も足を運んでくれた。00年に入団した当時の中日監督で、楽天監督に就任した11年には入団テストを経て、日本球界復帰を後押ししてもらった。プロで最初と最後のシーズンを星野野球のもとで過ごし、縁は深い。岡本氏は「星野さんが『岡本の店に行ってやれよ』と薦めてくれて、報道関係者を10人ぐらい連れて来てくれました。『初めてもつ鍋食べたよ』って言ってましたね」と懐かしがった。

多くの野球ファンが集う場所でもある。店内ではテレビ中継を観戦しながら、もつ鍋やタン焼きなどに舌鼓を打ち、野球談議に盛り上がる。岡本氏は「お客さんの6~8割は野球ファン。手が空いていたら、試合中のプレーを解説したりして、お客さんと会話します」。元プロと交流できることもあり、ファンを喜ばせている。

また、中日との交流戦が行われる日は「店内は楽天ファンと中日ファンが半々になっておもしろいです」と、大いに盛り上がるという。今年は交流戦が中止になり、実現するのは日本シリーズの場でしかない。両軍のユニホームを着た1人として、野球ファンが再び笑顔で集える日のために、店の明かりを取り戻していく。【佐藤究】

◆岡本真也(おかもと・しんや)1974年(昭49)10月21日生まれ、京都府出身。今年2月に亡くなった楽天元監督の野村克也氏と同じ峰山高(京都)出身。社会人野球のヤオハン、アムウェイ、ヤマハの3チームでプレーし、00年ドラフト4位で中日入団。04年には自己最多63試合に登板して初のオールスター、日本シリーズに出場。最優秀中継ぎ投手賞にも輝いた。08年に西武、10年にLGツインズ(韓国リーグ)に移籍。11年の楽天では1軍登板がなく、この年限りで現役引退。NPBの1軍通算成績は357試合登板で32勝19敗2セーブ、防御率3・21。現役時のサイズは183センチ、95キロ。右投げ右打ち。