38歳のベテランが、打線の灯火を消さない。阪神糸井嘉男外野手(38)が先制適時打を含むチーム唯一のマルチ安打で意地を見せた。

初回、DeNA先発平良の立ち上がりをたたいた。先頭の近本が四球で出塁すると、すかさず二盗。1死二塁で3番糸井がキッチリかえした。フルカウントからの6球目、外角低めに落ちる140キロシンカーを流し打ち。走者を警戒して広く空いた三遊間を破った。二塁走者の近本は快足を飛ばして生還。2試合連続打点の糸井は塁上でオリジナルの「糸巻き」ポーズを披露し、喜びを表現した。試合開始から13球、わずか5分の速攻だった。

超人は最後まで諦めない。8点ビハインドの最終回。先頭打者として3番手左腕エスコバーに食らいついた。追い込まれてから外角低めスライダーをバットに当て、三塁前へのボテボテのゴロで全力疾走。間一髪で一塁に駆け込み、内野安打をもぎ取った。手術した左足首の不安を感じさせない、2試合連続のマルチ安打。自身の休養日となった26日を挟み、連続試合安打を「7」に延ばした。試合状況に関係なく、最後まで全力プレーを貫いた。

3番に座って好調をキープする。開幕は1番に入ったが、打線改造によって3戦目からクリーンアップで起用。昨季100試合で先発した定位置で6戦3度のマルチ安打。打率4割1分7厘と結果を残している。27日の同カードで今季1号2ランを放った際には「絶対勝つ!」と、闘志を前面に表したコメント。元気のない打線の中で、ベテランが気を吐いている。

得意の夏場を前に、チーム3冠の成績ですでにフルスロットル。気温の上昇とともに、調子をさらに上げていく。気持ちを切り替え、名古屋に向かう。昨季、対中日は打率3割4分4厘と5球団で最も得意とした相手。背番号7のバットが、打線の呼応を待っている。【奥田隼人】