いよいよ、不屈の右腕の復活劇が幕を開ける。日本ハム上沢直之投手(26)が、30日ソフトバンク戦(札幌ドーム)に先発する。

左膝膝蓋(しつがい)骨骨折の大ケガを乗り越え、本拠地開幕戦の先発マウンドを任された。長いリハビリを生活を支えてくれた関係者やファンへの感謝の思いを胸に、378日ぶりの1軍マウンドへ上がる。

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さぁ舞台は整った。上沢が札幌ドームへ帰ってくる。「久しぶりなので、マウンドがどんな感じかも気になるし…だいたい分かっているつもりですけど。新しい気持ちで頑張りたい」。本拠地での先発は昨年6月11日広島戦以来。その1週間後の18日DeNA戦(横浜)で打球が直撃した左膝の皿が割れた。全治5カ月という不慮の大事故からの完全復活へ、いよいよスタートラインに立つ。

支えてもらった人のために一球入魂の精神で臨む。リハビリ期間中は「周りの人に助けられながら僕は野球ができていると、あらためて感じた」。長く険しい道のりは、ファンからの声援にも勇気づけられた。「僕の帰りを待ってくれている人がいるのはリハビリをする上で、かなり大きな原動力になった。明日の登板は感謝の意味を込めて投げたい。見てもらえると、うれしい」と決意表明した。

栗山監督も、この日を心待ちにしていた。本拠地開幕戦を託すことは、日程が発表された時にはイメージできていたが、最後は天命に任せていた。なるようになる、という意の「『わがはからいにはあらず』なんだけど」と浄土真宗の開祖・親鸞聖人の言葉を引用して「みんながナオ(上沢)に何とかしてあげたいという思いが、うまくそこにはまった形だと思う」。本人の努力、周囲の支え、ファンの願い…。全てがうまく合わさった純な思いをくみ取った野球の神様に導かれるように、復活の舞台は整った。

栗山監督 たぶん、一生忘れない本拠地開幕になるだろう。優勝するためには物語がすごく必要。そういう意味では、まずはナオが物語をしっかり作ってくれると信じている。自分勝手に、好き勝手に、楽しんで投げてくれればいい。ぜひ、北海道の人たちみんなで応援してほしいし、ナオの姿を楽しみにしてほしい。

上沢 ホームの開幕戦なので、任された以上は結果を残すことを一番にしてやりたい。何とかチームに勝ちを付けられるように頑張りたい。

感動は推進力だ、と栗山監督は言う。上沢の再起も然り。復活劇が、いよいよ始まる。【木下大輔】

<上沢復活の歩み>

▽19年6月18日 DeNA戦の6回、ソトの打球が左膝を直撃し緊急搬送

▽同19日 都内病院で左膝膝蓋(しつがい)骨骨折と診断され整復固定の手術を受ける。

▽同30日 都内の病院を退院。装具を付けて歩行している状態。

▽8月6日 近況報告のため札幌ドームを訪問。「1日でも早く戻りたい」

▽10月31日 キャッチボールを再開

▽11月29日 1000万円減の年俸6000万円プラス出来高払いで契約更改(推定)

▽20年1月19日 平地約30メートルの距離で捕手を座らせ投球練習。

▽2月4日 2軍の沖縄・国頭キャンプでブルペン投球再開。「普通にできることが楽しい」

▽同20日 栗山監督の前で32球の投球練習。

▽3月27日 故障後初めてフリー打撃に登板。打者相手は288日ぶり。30球投げて安打性は1。「ようやく野球選手っぽくなってきた」

▽5月21日 ブルペンで打者を立たせて70球。「今は80%くらいには来ているかな」

▽6月2日 ロッテとの練習試合で350日ぶり実戦登板。先発で2回49球4安打2失点。「疲れました。集中して投げるのは久しぶり」

▽同12日 巨人との練習試合で2番手登板。3回2安打2失点

同21日 イースタン・リーグ開幕の巨人戦に先発、5回1安打1失点に抑えた。「意外に早かったような、長かったような」