弱冠20歳の160キロ右腕の表情は少しも変わらなかった。6回1死満塁のピンチでマウンドに上がった西武平良海馬投手は、1番西川に3球連続ボール球を続けた。

「焦ったんですけど、立つ位置を少し変えながら、工夫して何とかしのげました」。満塁でカウント3-0の大ピンチでの内心を明かすも、パニックに陥るどころか、プレートを踏む位置を一塁ベース寄りに移動する落ち着きぶり。「ちょっと抜けていたので、それが修正できたんじゃないかと思います」。自らの機転で、奪三振ショーが始まった。

西川を157キロで空振り三振。さらに代打松本を3球で空振り三振に仕留めた。回をまたいだ7回のマウンド。先頭こそ中前打を許すも、4番中田を0-2と追い込みスライダーで空振り。前夜に2本塁打と絶好調の大田はカウント2-2から、外角低めギリギリにスライダーを投げ込み、見逃し三振。最後は「直球破壊王子」の異名を持つ渡辺。この日、最速の158キロを見せつつも、フルカウントからまたしてもスライダーで空振り三振と5三振をマークした。

札幌ドームは初めてのマウンド。回またぎもプロ入り初と、“初体験”ずくめの二十歳の夏を奪三振ショーで飾り「ランナーを出して焦らずに投球できているので、そこはいいとこですね」。プロ3年目。新人王資格も持つが「何したらなれるか分かんないんで、あまり意識しないで、投げて0点で帰ってこれるようにだけ意識して頑張ります」と、ひたすら0を刻んでいく。