エースが勇気を持って圧倒した。楽天則本昂大投手(29)が、日本ハム打線を9回途中6安打1失点で自身7試合ぶりの白星を挙げた。

今季最速154キロを計測した直球を軸に、フォークボールがさえ渡り9奪三振。8回まで二塁さえ踏ませなかった。今季初完投は逃したが、約1カ月半ぶりの4勝目をつかんだ。チームはソフトバンクを抜き2位に浮上。首位ロッテを0・5差で追う。涌井との両輪が並び立ち、混パを抜け出す。

  ◇   ◇   ◇

プライドがにじみ出た。9回無死一、二塁。降板を告げられた則本昂は唇をかみ、うつむきながらベンチへ退いた。「最後しっかりと、1人で締めたかった」。8回まで二塁も踏ませず、リードも保った。完封の見えた9回、3連打でマウンドを譲った。最後まで守り抜くのがエースの仕事。悔しさを隠さなかった。

背負うものがあるからこそ、力は増す。引き分けを挟み2連敗で迎えた7月24日オリックス戦。試合前練習中に近づいてきた三木監督から「チームに勇気をお願いします」と声をかけられた。「うちのエースだから、エースらしい投球も期待したい。でもあまり背負いすぎないように。シンプルに堂々とマウンドに立ってほしい」。

思いを受け止めた。今季初めての足立とのバッテリー。「今まではいろんな球を使って抑えようとしすぎていたと思った。真っすぐで押して行けたら」と恐れずシンプルに立ち向かった。立ち上がりから威力十分な直球を両隅にたたき込んだ。4回1死、中田との対戦では今季最速154キロも計測。自己ワーストタイの3回で降板した前回、14日の西武戦では平均146・4キロだったが、150・1キロに上げた。「強い真っすぐがあったからこそ、決め球が生きた。フォークは一番信頼している球」と9奪三振中8個を懐刀で奪った。

勝利が決まると表情を崩した。ブセニッツからウイニングボールをもらい、チームメートと握手を交わした。「ずっと仕事ができていなかった。今日は仕事ができた。9回を投げきれるようにやっていきたい」。チームに勇気を与えたエースが先頭に立ち、混パをかき分ける。【桑原幹久】