阪神大山悠輔内野手(25)が試合を決めた。同点で迎えた延長10回2死二塁で、広島ベンチは4番サンズを敬遠。大山が右中間への適時2点三塁打を放ち、意地を見せた。阪神は3カード連続の勝ち越しで1カ月ぶりとなる貯金1。2位DeNAに1差に迫り、シーズンを折り返した。過酷な連戦が待つ勝負の9月に突入する。

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大山は目の前の1球だけに集中していた。同点の延長10回2死一、二塁。3ボールからの4球目だった。甘く入ってきた直球をはじき返した。

大山 見逃すという気はなかったので、狙い球、コースを絞って、思い切っていきました。

凡退すれば勝利の可能性がなくなる打席だった。直前には4番サンズが3ボールから申告敬遠されていた。

大山 二塁になったところで、勝負は僕だろうと思っていたので、打つしかないと思って準備していました。次につなげるというよりは自分が決めるという気持ちで打席に入りました。

強い思いを乗せた打球は右中間ではずんだ。1球で仕留めきっての決勝2点三塁打だった。

マウンドにいたフランスアとは、これで今季3打数3安打。抜群の相性を誇るが「相性どうのこうのではなく、今日は今日。必死に食らいつきました」という。マツダスタジアムでも33打数14安打(打率4割2分4厘)だが、目の前の戦いだけに神経を研ぎ澄ましている背番号3は、同じ思いだろう。

8月ラストゲームで、チームは苦しかった試合をモノにした。初回にサンズの3ランで先行したが、その後は追加点を奪えなかった。二の矢、三の矢を放つことが出来ず、同点に追いつかれていた。一方で先発秋山は勝ち越しを許さず、救援陣は無失点で踏ん張っていた。1点を争う展開で巡ってきたラストチャンスを大山が制し、3カード連続勝ち越し。なにより、7月29日以来の貯金生活。60試合を終えて2年連続の貯金ターンも同時に決まった。

いよいよ勝負の9月戦線を迎える。1日からは13連戦も待ち受けている。矢野監督は「ここからまたスタート。1日1勝しかできない。それを積み重ねるしかない。みんな目の前(の試合に)精いっぱいトライしてくれている。そういう試合を続けていくしかないと思っています」。もちろん期待したい1人は、7月に8本塁打20打点、8月にも5本塁打15打点を稼いだ大山に違いない。

大山 厳しい戦いが続くと思いますが、1試合1試合、全員一丸となって戦うだけだと思いますので、頑張ります。

勝利の余韻にひたることなく、勝負のときへ、ヒーローは表情を引き締め直した。【松井周治】