阪神岩貞祐太投手(28)が、球児魂でプロ初ホールドをマークした。4試合連続登板もいとわず、同点の8回から2番手で登板。先頭の代打川端をシュートで二ゴロに打ち取ると、塩見をフォークで空振り三振。最後は山崎をスライダーで二ゴロと落ち着き払ったマウンドで0を刻み、傾きかけた流れを引き戻した。岩貞の快投があって、サンズのサヨナラ弾が生まれた。

中継ぎ転向9試合で直近5試合で無失点。この間、2戦連続で白星を手にするなど、救援防御率は2・00の安定感だ。「ハルト(高橋)が良いゲームを作って、良い試合だったので、自分もその波に乗ったというか抑えられて良かったです」。そう謙虚に話す左腕を、矢野監督は目を細めてたたえた。「サダがラッキーボーイ的な存在になってくれて、流れが来るような抑え方をしてくれている」。今やラッキーサダが勝利の使者だ。

心を新たにしてのマウンドだった。試合前、引退会見した藤川と話す機会があった。「球児さんは自分の引退よりも、チームの現状、戦い方っていうのを僕らに熱く語っていた。シーズン終わるまではそっち(引退)を見るんじゃなくて、前だけを向いて戦う」。大逆転Vへナインを鼓舞してくれた。その一言一言が、胸に響いた。球児の有終を飾るべく、勝利への思いはより強くなった。

球児との二人三脚も快投の源だ。上げた右足を1度真っすぐに下ろしてから投球する。球威を求めた岩貞の現在のフォームは、開幕前に藤川からアドバイスを受けて作り上げたものだ。この日、藤川は「6連戦中に6試合全て登板する準備があるのが、僕のモットーです」と口にした。中継ぎに転向した今だからこそ、重みが分かる。4連投でへこたれてはいられない。

最後に連投について問われた岩貞は、力強く答えた。「行けと言われたら腕を振るだけ。それだけです」。粉骨砕身-。球児の魂を受け継ぎ、きょうも全力で打者に向かう。【桝井聡】