阪神は救援陣が崩れ、延長戦を落とした。暗転したのは10回だ。5番手馬場がヤクルト打線を抑えられない。1死一、三塁のピンチを招くと山田哲に中堅への勝ち越し犠飛を許してしまった。万事休す…。3連勝で止まり、首位巨人と7・5ゲーム差に広がった。

この日も合言葉は「球児魂」だった。先発ガルシアがその心意気を体現する。序盤に2点を失ったが中盤以降、尻上がりに球威がアップ。5回は青木にファウルで粘られながら146キロツーシームで空を切らせ、6回も村上を149キロ速球で空振り三振だ。2イニング連続3者凡退の意地だ。

踏ん張らなければならない理由があった。この日のプレーボール直前。虎党なら誰もが知るメロディーが甲子園に流れた。ガルシアが、前日1日に今季限りの引退を表明した藤川の登場曲「every little thing every precious thing」(リンドバーグ)を選んでいたのだ。今季は「パプリカ」(Foorin)を使用していたが去りゆく仲間への思いを込め、強く希望して急きょ曲を変更していた。

「今日は球児さんの登場曲を使わせてもらって、球児さんの思いを背負ってマウンドに上がったよ。先制はされてしまったけど、粘りの投球はできたと思う」

ガルシアが6回2失点でしのぐと、7回以降は継投に入る。まずは藤川と1月に合同自主トレを行う望月が登場。恩返しの力投で1イニングを抑えると、8回は岩崎が封じ、9回はスアレスが無難に片づけた。バックネット裏にはレプリカユニホームとみられる「FUJIKAWA 22」が掲げられるなか、投手陣は必死に抑えにかかった。

4連投の岩貞はこの日、疲労を考慮しての温存とみられる。13連戦2戦目は打線が援護できず、6人でつないだリレーは報われなかった。矢野監督は「みんな粘ってくれた。投手に関してはみんなよく頑張ってくれた」と振り返った。これ以上、離されるわけにいかない後半戦は、前を向いて戦う。