中日の福谷浩司投手(29)がアクシデントでプロ初完投を逃し、涙の3勝目となった。8回1死一、二塁で4番鈴木誠を三振に仕留めたところで降板となり、帽子で顔を覆ったままベンチに戻った。「きょうは(完投が)行けると思っていたので、それが折れてしまい悔しかった。塁に出て走ったりして疲れがあったのかな。まだまだ力不足だなと思いました」。涙の理由を率直に話した。

投球フォームに異変を察知したベンチが動いた。プロ初完封も見え始めた8回1死から菊池涼、坂倉に連打を許した。鈴木誠を迎え、111球目をファウルされたところで与田監督がトレーナーを伴いマウンドに向かう。ここは続投が確認され、129キロスライダーで空振り三振を奪ったものの祖父江への交代が告げられた。

昨年、先発に転向したが腰痛に見舞われ1試合登板に終わった。再起を期した今季は7月下旬に昇格すると安定した投球を続け、8月11日の広島戦で先発初勝利。「完投をモチベーションに練習してきた」だけに悔し涙があふれ出た。不調が発生した具体的な箇所には触れず、コンディショニング不良とのみ明かした。

それでも113球、自己最長の7回2/3を投げ7安打無失点。打っても3回にはプロ初安打に初得点、6回には初適時打と「初ものずくめ」で3カードぶりの勝ち越しに貢献した。「バットを振ったら当たりました。また完投、完封できるように練習します」。試合後、笑顔に戻った8年目の右腕が間違いなく新たなステージに進んだ。【安藤宏樹】

中日与田監督(福谷の8回途中降板に)「(鈴木誠を迎えた場面で)初球からアレッと。数球は様子を見たいなというのがあった。降板することになってしまいましたが、カープ打線を寄せ付けない強いピッチングだった。本当によく頑張ってくれました。(症状については)まだ詳細ははっきりしたことが分からないので…」