勝ち運あるで~! 阪神が珍プレーでヤクルトに逆転勝ちした。1点を追う7回裏2死二、三塁でヤクルト・マクガフが走者のいない一塁へけん制悪送球。一気に2人の走者が生還し、逆転に成功した。4カード連続の勝ち越しで、矢野燿大監督(51)は就任2年目で通算100勝。4日から本拠地に首位巨人を迎え、勝負の4連戦。逆転優勝に望みをつなぐためにも、絶対に負けられない。

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甲子園にクエスチョンマークが浮かんだ。前代未聞の珍プレーが発生したのは1点を追う7回2死二、三塁の場面だった。ヤクルトの3番手マクガフが1番近本に3球目を投げた直後、一塁へけん制球を投じた。もちろん、走者もいなければ、一塁手もベースには付いていない。投げたマクガフもビックリ。見ている誰もがポカンだ。ボールは一塁ファウルゾーンを転々とし、植田、陽川が悠々と生還。逆転に成功だ。

思わぬ形で転がり込んだ矢野監督のラッキーな通算100勝。だが、指揮官は言う。「その前にしっかり陽川がつないでくれたし、そのあとしっかり盗塁したというのが効いた。最終的にラッキーな部分かもしれないけど、よくつないでくれた。いい働きをしてくれたと思います」。誰もが目を疑ったシーンだが、時を戻せば積極的な足攻めが起点になった。

7回、先頭ボーアがシフトをかいくぐるヒットを放つと、指揮官はすかさず代走植田を送り込む。続く梅野の犠打、代打陽川の左前打で2死一、三塁となると一走陽川は近本の2球目に二盗。途中出場の選手も意識は変わらない。前へ前への姿勢が、一塁に陽川がいるというマクガフの「勘違い」を生んだ。

ブルペンは守護神不在だった。この日、12セーブを挙げているスアレスが、1点差の9回マウンドに上がることはなかった。矢野監督は「実は今日ベンチに入れていなかった。ベンチにいるとどうしても使いたくなるから」。名前はあるが、ベンチにはいない。登板過多を考慮した休養措置だった。ストッパー不在の中で中継ぎ陣の必死のリレーで勝ち切った。

4カード連続勝ち越しを決め、13連戦最初のカードを勝ち越した。4日から7・5ゲーム差で追う首位巨人を甲子園に迎えての勝負の4連戦だ。最短7日にも自力Vが消滅するという崖っぷちだが、スアレス温存に加え、キャプテン糸原が1軍合流決定とG倒態勢が整う。矢野監督は「引きずり下ろさないと僕らは上に行けない。思いっきり僕らはぶつかっていくしかない。全員でぶつかっていきたいと思います」と高らかに宣言。セ界王者に全力で挑む。【桝井聡】

▼ヤクルト・マクガフが7回2死二、三塁で、走者のいない一塁方向へけん制球を投げ、悪送球となって2走者が生還した。公認野球規則の投手の反則行為(6・02のa)でボークになるケースのうち(4)「投手板に触れている投手が、走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合。ただし、プレイの必要があればさしつかえない」にあたる。ボークが宣告された場合はボールデッドとなり、各走者は1個の塁が与えられるが、「規則説明1」には「投手がボークをして、しかも塁または本塁に悪送球(投球を含む)した場合、塁上の走者はボークによって与えられる塁よりもさらに余分の塁へアウトを賭して進塁してもよい」とある。