阪神西勇輝投手(29)が「伝統の一戦」の初勝利をつかんだ。「本当に強い相手ですし、本当に初戦勝たないと流れというものを引きつけられないと思いました」。初回から持ち味の制球力を発揮し、前日3日に13得点した打線を6回まで1安打。1点差に迫られた8回途中に降板したが、7安打4失点、123球の力投だった。

打席でも2回に大山のソロで先制した後、1死一、三塁で2球失敗から3球目で執念のスクイズを一塁線に転がし、貢献した。これでオリックス以外の11球団制覇となり、それ以上に首位との4連戦初戦で大きな白星だった。「本当に無事に勝つことが出来て良かったですし、球児さんの思いをしっかり選手全員が受け止めて、頑張っていかないといけないなと思いました」。お立ち台でどうしても伝えたい思いだった。

1日に引退会見を終えた藤川からゲキを受けた時、西勇は言葉の端々から巨人戦に懸ける熱い気持ちを感じ取った。「今まで外様で、伝統の一戦と言っていいものなのか、感じていいものなのかと悩んでいました。それも関係なく向かっていく気持ちが大事だなと再確認できた。伝統の一戦の一員として加わって、躍動していければいい」。昨季オリックスからFA移籍。生え抜きではない自分が「伝統の一戦」の重みを口にしていいのか-。そんな迷いを拭い去ってくれた。

藤川が引退会見を行っていた同時刻、甲子園に藤川の登場曲、LINDBERGの「every little thing every precious thing」が流れていた。仕掛け人は西勇だった。「言葉の重みはすごく大事に受け止めて、球児さんが花道を飾れるように、みんなで一生懸命やらないといけない」。3連勝で今季5勝目は重みのある白星。レジェンド右腕が抱いてきた思いを、新たなエースがしっかり受け取った。【磯綾乃】