歴史的な大敗だ。阪神の藤浪晋太郎投手(26)が5回途中で11失点と大炎上した。甲子園3年ぶり、巨人戦4年半ぶりの白星を懸けたマウンドで、自己ワーストどころか創設85周年の球団の失点記録をも更新した。13連戦の5戦目。中継ぎ陣への負担を考慮した戦略的続投となる中、藤浪は9安打を浴びて押し出し含む6四球、火だるまになって125球を投じた。首位巨人と再び7・5差となった。

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騒然とした雰囲気の中、2番手能見がマウンドに走る。藤浪は顔面を硬直させたまま、帽子を取って頭を下げるしかなかった。うつむいて一塁ベンチへ駆ける。全身に注がれた温かい拍手に切なさすら覚えた。

最後はもう気力のみに映った。7失点で迎えた5回、カットボールが引っかかる。抜ける。直球も引っかかる。ブロッキングに定評のある梅野ですら後逸を余儀なくされた。2死満塁から内野ゴロ悪送球でさらに2失点。直後に2点打を浴びて降板を告げられた。

「大事な4連戦で勝たなければいけない試合でしたが、崩れてしまい、チームに迷惑を掛けてしまい、申し訳ないです」

4回2/3で125球を投げ、9安打6四球で11失点(自責7)。降板直後はぼうぜんとうなだれた。1試合11失点は1936年からの球団史をひもといてもワーストの数字となった。

7・5ゲーム差でスタートした首位巨人との本拠地4連戦。前日4日の初戦を大黒柱・西勇で取り、一気に勢いを加速させたかった。絶対に負けられない-。高ぶる感情が力みにつながったのかもしれない。

2回、カウントを悪くした後に痛打されて2失点した。3回は1死満塁から5番丸に押し出し四球を献上。6番ウィーラー、7番大城、8番吉川には甘くなった直球を狙われ、3者連続適時打を浴びた。際どいゾーンのボール判定に思わず天を仰ぐ場面もあった。

3回までに7失点。矢野監督が「苦渋の選択」と振り返った通り、それでも続投させざるを得ない事情があった。13連戦の5戦目。せめて少しでも中継ぎ陣の負担を減らしたかったが、最後は限界が訪れた。

この日は雷雨の影響で試合開始が1時間2分遅れていた。調整に難しさがあったとはいえ、想定外の大炎上で5敗目。これで巨人戦は登板9戦連続で白星なし。甲子園戦も11戦連続で白星なしとなった。

5回途中4失点と苦しんだ前回8月29日広島戦に続き、2戦連続で背信投球。首位巨人とのゲーム差は再び7・5に戻った。矢野監督は藤浪の今後について「それは分からない」と話すにとどめたが、13連戦で先発の枚数が必要な状況でもあり、次回もチャンスが与えられる可能性は高い。

ダメージを食らった1敗を力に変えられるかどうか。藤浪の底力を見たい。【佐井陽介】

▼藤浪が4回2/3を投げて11失点。1試合で11失点以上は、昨年6月14日西武戦で5回を投げて11失点のブキャナン(ヤクルト)以来になる。1試合の最多失点記録は50年5月31日伊藤(東急)の18失点だが、阪神で11失点は過去7人が記録した10失点を抜く球団ワースト記録となった。