粘投が実った。広島九里亜蓮投手(29)が、8月10日以来1カ月ぶりに3勝目を手にした。2回以降は毎回のように走者を許したが、根気強く低めを意識した投球で6回まで無失点でしのいだ。エース大瀬良やK・ジョンソンが離脱する中、実績のある右腕の復活星で、チームは最下位から抜け出した。

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右上の空を見上げ、心を落ち着かせた。プレーボールからセットポジションで試合に臨んだ九里は2回以降、毎回のように走者を背負った。両サイド低めを狙い、5つの四球を出した。

それでも根負けしなかった。3回は2死一、二塁で二遊間を抜けそうなゴロを遊撃田中広がダイビングキャッチ。4回は2死満塁で投手石川を空振り三振。5回1死満塁は雄平を空振り三振、エスコバーを二ゴロに打ち取ると、口元を隠したグラブ内で感情を解放するかのように叫んだ。

気迫と冷静のバランスを保ち、6回無失点と粘った。お立ち台では安堵(あんど)感が顔にあふれた。「チームに勝ちが付く投球ができていなかったので、やっと出来て良かったです」。チーム同様、九里にとっても苦しい戦いが続く。託された6連戦の初戦となる“火曜”に勝てなかった。142球を投じた前回1日の中日戦から中6日、100球の粘投で今季初めて6連戦初戦で白星を得た。

4日に16年沢村賞のK・ジョンソンが出場選手登録を抹消され、6日には2年連続開幕投手のエース大瀬良が「コンディション不良」で離脱。1週間で2人の主戦級を欠く危機に、九里は奮起した。佐々岡監督は「当然、今いるメンバーでやらないといけない。九里は同期の大瀬良が抜けて俺が、という気持ちだと思うし、チームを引っ張ってもらいたい」と期待する。

九里は結果に納得しながらも、5四球などの投球内容を猛省。「満足はしていない。課題が出たので、しっかり改善してチームを勝ちに導ける投球をしたい。1年間ローテで投げきった経験がないので、ローテを守って投げたい気持ちは大きい。チームを引っ張っていけるような存在になりたい」。5試合ぶりの勝利には、堅守に果敢な走塁、全力疾走という広島らしさが全面に出た。苦しみを乗り越えた先に、明るい光は見えてくる。【前原淳】