これぞエースの意地だ。ソフトバンク千賀滉大投手(27)が、今季最長の8回を3安打無失点にまとめ、チームの連敗を3で止めた。打率リーグトップの楽天打線を相手に、今季最多13奪三振の快投。石川に並ぶチームトップの6勝目をマークした。0・5ゲーム差で迫る2位ロッテも連勝を5に伸ばすデッドヒートで首位を死守。6連戦の先陣右腕がチームを勢いづけた。

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2位ロッテが迫る負けられない戦いで、千賀が「エース」らしい姿を見せた。7回だ。先頭田中の打球が左足に直撃し、内野安打になった。ベンチに向けて手を上げ「絶対(コーチやトレーナーが)出て来るんで。大丈夫だという意味です」。そのまま続投し、無死一、二塁では4番島内を空振り三振。2死満塁からは銀次を渾身(こんしん)の155キロで見逃し三振に斬り、グラブをバチンとたたいてほえた。凜(りん)とした姿でマウンドを守り、チームに勇気を与え続けた。

今季最長の8回を投げ、被安打はわずか3。今季最多13奪三振の力投で強打の楽天打線を無失点に抑えた。ノーヒットノーランを達成した昨年9月8日ロッテ戦(ヤフオクドーム)以来、1年ぶり完封はならなかったが「きょうは今年初めて自分の球が放れた。いい姿勢でマウンドに上がれたと思う」と胸を張った。

前回登板の1日オリックス戦では押し出しを含む1イニング4四球などで自滅。工藤監督は「エースとしての責任を感じて、(次の登板まで)1週間を過ごしてほしい」とあえて厳しい言葉で奮起を要望。チームを背負うべき右腕に対し「若い人にとって『まねしたい、ああなりたい』と思うような投手であってほしい」と期待していた。この日の投球には「今日は本当にマウンドでのしぐさもよかった。いい時の千賀に戻ってきた」と目尻を下げた。

千賀自身は「今年の内容や姿勢だけ見ると、ぼくはそう(エースだと)感じなかった。こういう投球を重ねていって、そう呼んでもらえるように」。自身の立場を理解し、求められている姿をマウンドで示した。

チームの連敗は3でストップ。この日2位ロッテも連勝を5に伸ばす中、0・5差のまま首位を死守した。「流れがいきそうなところは正直あった。全部断ち切るという思いでいって、それができた」。千賀は今季一番、自信に満ちた顔でうなずいた。【山本大地】