東北、宮城出身の右腕が、水の合う北の大地で躍動した。

楽天岸孝之投手(35)が今季最多124球の熱投で日本ハム打線を7回途中1失点に抑え、3勝目を挙げた。力、キレとも自身も納得する直球を軸に試合を作った。楽天加入後の17年以降、札幌ドームでは7戦4勝、防御率1・11と好相性の数字通りの投球で、16年から日本ハム相手に8連勝。14年目、通算128勝を誇る右腕が本領を発揮した。

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要所は絶対に締める。岸が心のギアを上げた。4点を先制してもらった直後の4回。1点を失い、なおも無死二塁。「4点もとってもらって、ポンポンと2、3点とられたら全く意味がない」。中田を一邪飛、大田を遊飛。最後は渡辺を一邪飛に仕留め、しのいだ。「何としても抑えようと思った。あそこを1点で抑えられたことが今日は一番よかった」。主導権をがっちりと押さえた。

見えない力も、背中を押す。札幌ドームでは楽天加入後の17年以降、7戦4勝無敗。48回2/3を投げ、自責6、防御率1・11と驚異的な数字が並ぶ。「すごく広いのでファウルゾーンでフライアウトになることがすごく大きい。雰囲気が好きなのか、自分でも悪くない印象はあります」。高々とそびえるフェンスも味方に、キレのある直球を両隅へ果敢に投げ込める。日本ハム相手に西武時代の16年8月9日から8連勝としたことも、筋が合う。

投げても投げても、球威は落ちない。最速145キロの直球は威力十分。「自分の納得する球が投げられている。真っすぐがちゃんとしないとこういう結果にはならない」と軸が決まれば、宝刀カーブ、チェンジアップ、スライダーの存在感も増す。

6回を終え104球も続投。7回2死二塁で124球に到達し降板を告げられたが、ベンチへ戻る際にはスタンドからは拍手が起こった。三木監督も「岸の心意気にまた頼って、頑張ってもらいました」とベンチに座る岸へ寄り「ナイスピッチング。次も頼むな」とねぎらいの言葉をかけた。

残り25試合で2位ロッテには5・5ゲーム差。「今日勝たないとダメだなという思いで投げた。まだまだ諦めずにみんなで戦っていきたい」。この試合がレギュラーシーズンでは札幌ドームでの最終戦。3戦連続でクオリティースタートを達成した右腕が、ここからいっそうギアを上げていく。【桑原幹久】