広島の育成出身3年目の藤井黎来投手(21)が1回無失点で1軍デビューを飾った。阪神戦の7回に登板。先頭打者に安打を許すも、最速146キロをマークした直球を武器に後続を断った。チームは大敗で連勝は4でストップ。阪神戦は2年連続負け越しとなり、借金も2桁に逆戻り。それでも、9月26日に支配下選手登録を勝ち取った右腕が本拠地で輝かしいスタートを切った。

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7回表、マツダスタジアムにエリック・クラプトンの「いとしのレイラ」が流れ出した。友人らに勧められた登場曲に背中を押され、背番号が「121」から「58」になったばかりの藤井黎が笑顔でマウンドに向かった。待ちに待った1軍の舞台。「めちゃくちゃ緊張しました。緊張で周りの音は聞こえなかったけど、お客さんが入るのはいいですね」。本拠地での登板は1軍に「プレ昇格」した3月25日のヤクルトとの練習試合以来。当時は無観客だっただけに、観客の入った試合に胸はいっぱいだった。

初球からエンジン全開だった。梅野へ投じたプロ第1球目はこの日最速の146キロ直球。外角低めにビシッと決めた。追い込んでから右前打を許した。無死一塁から迎えた小幡にはファウルで粘られるも、最後は真ん中低め145キロ直球で見逃し三振。続く西勇に犠打を決められ得点圏に走者を背負うも、最後は近本を内角高め144キロで二ゴロに。1回無失点デビューにも「ゾーンで勝負できたのはあるけど、ボール先行でフォークが甘く入った。そういうところをなくしていきたい」と反省は忘れなかった。

秋田・大曲工から17年育成ドラフト2位で入団した。「焦りもあったし、今年結果を出さないと、という気持ちだった」。今季はウエスタン・リーグで17試合に登板。持ち味の直球とフォークを武器に防御率0・76を誇る。9月26日に支配下選手登録され、今月6日に1軍昇格。右腕の力投に佐々岡監督は「あの場面で無失点で抑えられたのは自信にしていってほしい」と評価した。

藤井黎は今後の目標について「このまま無失点で抑えて勝ちパターンで投げたい」。憧れの投手にはフォークを扱う永川2軍投手コーチ、一岡、今村の3人を挙げた。名前は「黎明(れいめい)」の「黎」に、未来の「来」。若手のホープが、カープの新時代を切り開いていく。【古財稜明】

◆藤井黎来(ふじい・れいら)1999年(平成11)9月17日生まれ、秋田県出身。大曲工から17年育成ドラフト2位で広島入団。昨秋1軍キャンプに同行し、3年目の今季は2軍17試合で0勝1敗、防御率0・76。9月26日に支配下選手登録され、背番号は121から58に変更された。182センチ、92キロ、右投げ右打ち。