土俵際のチームを救った。楽天涌井秀章投手(34)がロッテ打線を7回1失点に抑え、リーグトップの11勝目を挙げた。初回、マウンドに足をとられ、藤原に初球先頭打者弾を浴びたが簡単には崩れない。粘りの投球で味方の援護を引き出した。負け、もしくは引き分けでも自力CS進出の可能性が消滅する一戦で、右腕が意地を見せた。チームは2位ロッテに5ゲーム差とした。

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「あと何試合投げるか分からないですけど、全部勝って最後まで野球がしたいと思います」。ヒーローインタビューでマイクを握った涌井が、言葉に思いを込めた。望みをつなぐ“1勝”を右腕で引き寄せた。

約3時間前。いきなり足をとられた。初回。先頭藤原への初球を投じた際に、踏み出した左足をすべらせた。143キロの直球を右翼席へ運ばれ先制点を許した。次打者加藤にも3ボール1ストライクとボール先行が続いた。沸き立つスタンド。ただ、右腕は冷静にマウンドの土を足で掘り起こした。「去年と土が変わったのかなとオープン戦から感じていた。あそこまでずっと滑ると思わなかった。でもちょっと掘れば硬い部分が出てきて自分の足の位置にはまる場所が見つかった」。シンカーで二ゴロに打ち取り「ずるずるといかなかったことが大きかった」とペースを取り戻した。

同点の5回には1死満塁のピンチを招くもマーティンを二飛、安田を空振り三振にとり、右拳を握った。「自分で広げたピンチだから(ガッツポーズを)するつもりもなかった」。直後に浅村の決勝弾を引き出し、7回までマウンドを守った。

リーグトップの11勝目。1勝の積み重ねでしか、上位を捉えることはできない。「みんなもこの1週間が大事と分かっている。昨日は則本も気合の入ったピッチングを見せてくれた。今日しっかり勝てたことが大きい。今日しっかり勝って、CS、優勝の目も残ると思う」。可能性のある限り、右腕を振り続ける。【桑原幹久】