ソフトバンクが27日、3年ぶり19度目のリーグ優勝を果たした。

V奪回を誰よりも待ち焦がれていたのはソフトバンク王貞治球団会長(80)だった。「勝つことが特別なことじゃなくなった」。ダイエー時代から監督としてチームに勝利への執念を植え付け、フロント業となってさらに常勝の道を歩んだ。手応えを感じる一方、故障禍などで2年連続のV逸。ユニホーム組以上に歯ぎしりした2年間だった。

古巣巨人を倒して3年連続日本一に輝いた。だが、雪辱の気持ちがまさった。昨秋の宮崎キャンプ。「工藤監督が決めたことだから。これはいいことだよ。監督指示だから」。18年に王会長が招いた金星根(キム・ソングン)コーチングアドバイザー(77)が今季から1軍に帯同することになった。2年間はファームで若手育成を担ったが「勝負のシーズン」に向けて工藤監督が呼び寄せた。「やっぱり選手は練習だと思う。その点で言えば金さんは適任。1軍でもしっかりやらせないとね」。秋の日差しに、王会長の顔も少しばかり紅潮して見えた。

金氏は韓国プロ野球のSK、サムスン、LGなどで1300勝以上を挙げた名将。韓国では「野神(ヤシン)」と呼ばれ、妥協なき練習でチームを鍛え上げてきた。工藤監督の依頼で今季は打撃部門を中心に助言を送り続けた。終盤戦は不調のバレンティンにも練習後の素振り室でティー打撃を行っていた。

今季ペイペイドームではネット裏の部屋で王会長と金氏がチーム状況など意見交換しながらほぼ全試合を見守った。工藤監督はグラウンドのみならず遠征の移動中も金氏に「監督業」について助言を求めた。金氏は「ミーティングは長くやらないように。怒るときは簡単明瞭に」などやんわりと進言したりもした。

王会長も望んだ「老将の知」はV奪回の縁の下の力となった。【佐竹英治】

◆金星根(キム・ソングン)1942年12月13日、京都府生まれ。京都・桂高校卒業後、韓国に渡り、実業団チームを経て82年の韓国プロ野球発足時から指導者に。84年OBベアーズ(現斗山)から17年5月末にハンファを退任するまで、プロ7球団で監督を歴任。07~11年にSKで優勝3回。監督通算1372勝は歴代2位。野球の神様を意味する「野神」の異名を持つ。05~06年に日本のロッテで1、2軍巡回コーチなどを務め、18年からソフトバンクのコーチングアドバイザー。