今季限りで19年の現役生活にピリオドを打つことを決断した広島石原慶幸捕手(41)の引退セレモニーが7日の阪神戦(マツダスタジアム)で行われる。

先発する広島中村祐太投手(25)が6日、先輩の花道を勝利で飾ることを誓った。ベテラン捕手から多くの助言をもらった感謝の思いを込めて、全力で腕を振る。

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勝利で恩返しを-。中村祐が引退する石原慶への思いを胸に、本拠地でキャッチボール、ダッシュを入念に行い、試合に備えた。大先輩の門出の試合で先発を託された右腕は「光栄なこと。そこで投げられる巡り合わせに感謝して、石原さんの最後の試合を勝利で飾れるように、必死にやっていきたい」と気合を入れた。

忘れられない思い出がある。18年4月24日のDeNA戦(横浜)。先発した中村祐は8回まで1失点と好投。プロ初完投勝利をかけた9回、連続四球を与えるなど1死満塁のピンチを招き、途中でマウンドを降りた。結果的にチームは勝利を飾ったが、自らのふがいない投球に腹を立て、悔しさを態度で表し、ベンチでは涙を流した。

落ち込む右腕に、叱咤(しった)激励したのが石原慶だった。試合後に宿舎の部屋に呼び出された。「悔しさは分かるけど、チームが勝っているのに態度に出すとダメだ」と諭されたという。加えて「精神的にも人としても、もっと周りを見られるようになったら、もっと良いピッチャーになれる」との助言も受けた。右腕は「その言葉はずっと胸に置いてある。野球人の前に、人としての振る舞い、成長がないと技術が向上しない。今すごく実感している。感謝しています」と感慨深げに語った。

7日の試合が自身にとって今季最後の登板となる。ここ4試合連続でクオリティースタート(QS=先発6回以上、自責点3以下)を達成するなど、防御率も2・21と抜群の安定感をみせている。「良い投球が続いているので、それを変えずに来年につながる投球ができたらいいと思います」。勇退する先輩へ感謝の気持ちを込めて、マウンドに立つ。【古財稜明】