数々の勝利をありがとう-。今季限りで現役を引退する中日吉見一起投手(36)が6日のヤクルト戦(ナゴヤドーム)で引退試合に臨んだ。先発で打者1人に投げ、空振り三振を奪った。通算90勝でチームの黄金期を支えた右腕が、ファンの最後の声援を受け、マウンドを去った。

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竜の黄金期を支えた吉見が、最後の登板を終えた。ヤクルトとの今季本拠地最終戦。入場制限ほぼ上限の1万6507人ファンの拍手に包まれた。周囲の景色を眺め、プレートを4度、手で丁寧に払ってから試合に臨んだ。ヤクルトの先頭山崎に外角低めのシュートでストライク。全盛期さながらの低めへ球を集めた。カウント1-2からの4球目。外角低めへ138キロの直球で山崎のバットに空を切らせた。223試合目の登板。845奪三振を刻んだ。

「みんなに支えられて15年間のプロ野球人生をまっとうすることができました。本当にいいプロ野球人生でした」

スタンドにはともに自主トレをしたソフトバンク千賀、石川も。「この球場に育ててもらった。無意識にありがとうという言葉を伝えた」と、再びプレートを6度、手で払い、名残惜しそうに触れた。

笑顔の最終登板とは違い、引退セレモニーでは涙がこぼれた。OB岩瀬仁紀氏(野球評論家)の花束贈呈のあと、3人の息子から花束を受け取った。目を潤ませ、3人を抱きしめた。

15年間戦ってきたナゴヤドーム。こだわってきたマウンドからホームベースまでの18・44メートルの中間に置かれたマイクで語りかけた。「ドラゴンズは強い。もっともっと強くなる。1日1日を大事にして後悔のないように今年独走したジャイアンツを倒して与田監督を男にしてください。。必ずできると思います。期待しています」。背番号19として本拠地に立つ最後の日に、グラウンドの感触をかみしめながら、ファンを声援を受けながら歩いた。絶頂期からケガで苦しんだ時代までを知る竜党の声援や拍手が吉見を包んだ。

チームは本拠地最終戦でヤクルトに惜敗したが、8年ぶりのAクラスは確定。黄金期の再来を後輩に託し、一時代を築いた元エースはマウンドを去った。【伊東大介】