プロのスカウトたちは、今年のドラフトをどう見たのか。「ドラフト感想戦」後半です。
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【指名漏れ】 印象に残った例を挙げてもらった。
「成田・古谷。身体能力が高い捕手で、外野、遊撃もできる。ドラフトの死角に入ったというか。驚いた。なぜ漏れたか不思議」
「東海大・小郷。球速が150キロを超えるのに」
「北九州市立大・益田。制球がよく、全球種きっちり投げられる。かかると思っていた」
「セガサミー・森井。最速152キロ右腕で前評判がよく、高卒3年目の若さを考えれば、指名はあると思っていた」
【BC・埼玉・田沢】 元大リーガーも指名はなかった。最終的な可否は編成幹部などが決めるものだが、スカウトの立場からの率直な意見を聞いた。
「またメジャーから声がかかった時を考えると、判断は難しかったのでは」
「未来を担う選手を取る場で、34歳の指名は難しい。本人のプライド的にも、下位や育成指名はどうかということもあったのでは」
「年齢では。若手の成長具合と見比べ、18歳の伸びしろにかけたということ」
【育成大量指名】 育成計49人は過去最多。巨人12人、ソフトバンク8人、オリックス6人が際立った。
「施設面、環境面、育成システムがそろっている球団だからできること。3球団の明確な意思を感じる」
【コロナ禍】 活動休止や大会中止の影響は否めない。育成をのぞき、高校生30人は昨年より5人減。社会人・その他12人は2人減。反対に、大学生32人は昨年より7人増えた。
「高校生はこれまで春先、夏前と右肩上がりで見ていたが、実戦が減り、イメージが湧かなすぎた」
「高校生はコロナ自粛明け、調整がうまくいっていない選手が多かった。10代には甲子園がなくなり失うものが大きかったのでは。逆に、大学生は自粛がいい休養となり、パワーアップできた。秋季リーグまであるので、準備できていた。巨人1位の亜大・平内、DeNA1位の明大・入江、西武4位の駒大・若林など、4年秋で評価を上げた」
「社会人は春先のスポニチ大会からJABA大会、都市対抗、全日本選手権と年間通して積み上げていたのが、断片的なオープン戦となり、状態が上がらない選手がいた」
社会人については、異なる見方もあった。
「試合をこなせば、こなすほど評価を上げる選手もいるが、ボロが出る場合もあり、少ない試合で印象を残す選手もいる」
指名を分けるものは何なのか。あるスカウトの言葉で締めたい。
「指名漏れしても力は遜色ない場合もある。担当する選手を、いいタイミングで上司に見せられるか。幹部を呼んだのに雨で中止になったり、打てなかったり。縁もある。我々は限られた機会で判断するしかない。イニング間の練習もチェックしている」(おわり)