阪神藤浪晋太郎投手(26)は気迫むき出しの雄たけびで20年を締めくくった。

両チーム無得点の5回無死一、三塁から3者連続三振。「いい形で能見さんまでつなぎたかった」。口元が「シャーッ」と動いた。

長年チームを支えた能見の退団試合。練習では「14番Tシャツ」を着用し、名残惜しそうに先輩と言葉を交わした。「練習に対する姿勢、取り組み方、投手としての考え方で影響を受けた方」。熱い感情が気温10度前後の寒さに勝った。

低重心から最速157キロの直球を低くコースに安定させる。140キロ台のスプリットを振らせる。5回を9奪三振4安打2四球で無失点。中継ぎ13試合を経て先発復帰後、計15回を自責点0でシーズンを終えた。1294日ぶりの甲子園白星を逃しても、価値ある手応えを確信に近づけた。

G党だった小学5年秋、甲子園内野席で阪神リーグ制覇の瞬間に立ち会った。05年9月29日巨人戦の出場メンバーのうち、今季も現役で縦じまを着た選手は藤川だけ。そんなレジェンドも前夜、引退試合を終えた。「技術だったり、すごく引き出しの多い方。すごく影響を受けた」。ナイター後のセレモニーまで見届けた藤浪はこの日、先輩たちへの感謝を白球に乗せた。

昨季限りで鳥谷(現ロッテ)が退団。今季限りで藤川が引退。福留、能見、上本も退団する。一時代が終焉(しゅうえん)を迎え、新時代に突入する。バトンは若い世代に託される。

新型コロナウイルス感染から何度もつまずいた1年。「いいシーズンではなかったですけど、良くなるためのきっかけのシーズンにしたい」。先人たちへの思いも胸に、藤浪は再び未来へ走りだす。【佐井陽介】