守備力向上には具体的な指導と経験しかない! 阪神は今季も失策数12球団ワーストに陥り、それがV逸の一因にもなった。広島3連覇監督の緒方孝市氏(51=日刊スポーツ評論家)は矢野監督3年目の来季へ向け、その原因を分析、対策を提言した。【聞き手=編集委員・高原寿夫】

  ◇   ◇   ◇

阪神、次いで広島に失策が多いのは土のグラウンドの問題もある。プロだから言い訳にはできないが、それは事実だろう。その上で思うのは、阪神にはやはりセンターラインを固定できなかった問題があるのでは、と思う。

自分も広島監督時代、守備面ではセンターラインを重視していた。当然ながら球にさわる機会が多いからだ。ゴロをさばくだけでなくバント処理、投手との連係などやることはいくらでもある。一、三塁の両サイド、外野手は正直、守りのミスを覚悟しても打てる選手を起用することが多い。だからこそ余計に、センターラインが重要になる。

監督になったとき、すでに菊池涼は名手だったが、遊撃は田中広で固定しようと決めた。しかし田中は遊撃手としては、正直、肩が強くない方だった。そこを補うために体幹を鍛えさせた。その上で素早く正面に入って素早く送球するという練習を続けた。

守備力向上のためにはやはり、具体的な指導が必要だ。姿勢、体勢から始まって、それぞれの選手は横の動きができないのかタテの動きが苦手なのか。そこをハッキリさせ、コーチとマンツーマンでやっていく。それしか向上への道はない。

人工芝の球場ならこれは少し違うかもしれない。グラブさばきでカバーできるところも大きいからだ。しかし土、アンツーカーといった甲子園、マツダスタジアムのような球場では広岡達朗さん、吉田義男さんら昔の名手がやっていたような技術がやはり必要になってくる。グラブさばきというより、足の使い方、足のさばきが重要だ。

自分の現役時代を振り返れば、入団時はセカンドだったがすぐクビになった。三村監督にも一度、やらされたがすぐに「おまえは外野じゃ」と言われた。内野手の資質がなかったんだろう。腰が高く、グラブを下に置けない、膝の柔らかさといったことだった。

とはいえ外野も簡単ではない。例えば甲子園の芝はゴロが“スネーク”する。雨など降れば最初のバウンドがスリップしたり止まってしまったり。本当に難しい。そこに浜風、あるいは逆の風と状況が変化する。それだけではない。ゴジラ松井の打球などライナーで飛んできて“真っスラ”する。正面で捕れると思ったら、真横にダイブしたこともあった。プロだから、すべて言い訳になるが簡単ではないということだ。

選手に伝えていたのは、ワンプレーを大事にするということだった。「まず1つアウトをとってから次を考えてくれ」と強調した。堅実に1つのアウトを取ることが何より大事。そう思わないと焦ってしまう。

阪神は中心選手が若くなってきた。近本も木浪もまだ2年目を終えたところだろう。経験次第でゴールデングラブを取れる可能性も秘めていると思う。だからこそ反省して課題を決めて、それに向き合っていくことが大事だ。今季、広島で失策しなかった菊池でも、2年目の13年はリーグワースト18個の失策をしている。経験も重要なのだ。