二塁手として史上初めて守備率10割でシーズンを終えた広島菊池涼介内野手(30)が今季“エラー”をしたと判定された試合がある。8月11日の中日戦(マツダスタジアム)の3回、京田のライナーに飛びついたが、空中で変化したかのような不規則な打球に、タイミングが合わなかった。スコアボードに「E」のランプがともった。

しかし、試合後になって中日から「あれは失策ではなくて京田の安打なのでは」と問い合わせがあった。それをもとに検証し、記録員が公式記録を訂正した。8月13日付の日刊スポーツにわずか5行の記事が掲載されている。

◆訂正 日本野球機構(NPB)は、11日の広島-中日11回戦(マツダスタジアム)の中日京田の3回打撃結果を「二失」から「中前打」に訂正した。

というもの。あの時点では、この原稿の持つ意味の大きさに気がつかなかった。今季初めての失策がなかったことになった菊池涼は、その後、1つも失策を犯さなかった。

菊池涼がリーグ最多得票を飾ったゴールデングラブ賞の開票の際、セ・リーグの杵渕和秀統括は感慨深げだった。「中日が記録の訂正を求めなければ、菊池選手の守備率10割はなかった。記録員の判定1つがとても大事だとも思いました」。小さな奇跡をくぐり抜けて、大記録は生まれた。【竹内智信】