今季限りで阪神を退団した上本博紀内野手(34)が現役引退を決断したことが21日、分かった。他球団移籍の道を断念したことを自身で発表した。小柄な体格ながらパンチ力のある打撃と俊足を武器に、縦じまひと筋の現役生活12年間を全う。来季はタイガースアカデミーのコーチに就任する見込みだ。

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虎党に愛されたリードオフマンが、34歳の若さで現役引退を決断した。上本はこの日、報道陣の取材に「現役を続ける道を探してはいましたが、最終的に今シーズンをもって現役を引退することを決めました」と発表。「12年間タイガースのユニホームを着てプレーさせていただき、お世話になった球団、いい時も悪い時も応援いただいたファンの方々には感謝の思いしかありません」と続けた。

今季は1軍25試合出場で打率1割7分1厘。二塁レギュラー争いで糸原、小幡ら後輩の後塵(こうじん)を拝し、来季のチーム構想から外れた。オフは他球団移籍を模索したが、この日までに断念した。縦じまひと筋12年間のうち3シーズンで規定打席に到達し、14年からの3年間はチーム選手会長も歴任。小柄な体格で懸命に走り抜いた現役生活に、幕を下ろす。

最後までケガと戦い抜いた。12年春は左肘内側の側副靱帯(じんたい)を負傷。13年2月下旬には左足首の前距腓靱帯を損傷した。14年には右手親指を骨折。15年以降も左上前腸骨棘(こっきょく)亀裂骨折や左太もも裏肉離れに苦しめられたが、その度にはい上がってきた。「ボールに当たってでも、なんとか塁に出たい」と打席の内側ギリギリに構えたこともあるガッツマン。だが、最後の重傷には打ち勝てなかった。

阪神退団後の今オフには「体も痛いんで…」と本音もこぼれた。18年5月に左膝を負傷し、同6月に前十字靱帯を手術。長期リハビリ後も違和感が消えることはなかったという。強振すると、左膝が力を逃がそうと無意識に開いてしまう。体の現状も冷静に受け止め、ユニホームを脱ぐ決意を固めた。

球団は早大時代も主将を任されたリーダーシップを高く評価しており、引退後のポストを用意。来季はタイガースアカデミーのコーチに就任する見込みだ。「次の道でも、これまでの経験を生かして一生懸命頑張っていきます」。まずは類いまれな技術を次世代につなぐ。【佐井陽介】

◆上本博紀(うえもと・ひろき)1986年(昭61)7月4日生まれ、広島県出身。広陵では甲子園に春夏通じて4度出場し、2年春には優勝を経験。早大に進み通算109安打を放ち、4年時には主将に就任。08年ドラフト3位で阪神に入団。14年に選手会長に就任し16年まで務めた。規定打席に3度到達したほか、長打力も併せ持つ内野手として存在感を示した。173センチ、66キロ。右投げ右打ち。