西武が“不死身の左腕”を補強する。新外国人としてカブスのマット・ダーモディー投手(30)を獲得することが20日、分かった。

大リーグ通算29試合2勝0敗のキャリアで、身長196センチの大型左腕。メジャーに初昇格した16年オフには、宅配自転車のアルバイトで交通事故にあいながら、無傷で生還した異色のエピソードを持つ。左腕不足の西武では先発投手として期待され、2年ぶりリーグV奪還を目指す上で、早くも大当たりの予感が漂っている。

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2年ぶりリーグ優勝を狙う西武が、“大当たり”を引き当てるかもしれない。複数の関係者によると、メジャーの名門カブスから、196センチ左腕・ダーモディーを獲得することが判明した。近日中にも発表される。パワーピッチャーで、先発での起用が有力。今季チーム唯一の新外国人選手となり、先発ローテーション候補に急浮上した大型左腕は、米国での野球生活は波乱の連続だった。

26歳だった16年、ブルージェイズでメジャー初昇格。しかし、地元のナショナルポスト紙によると、そのオフはまだニューヨーク市で自転車配達業のアルバイトをしていた。業務中、目の前のバイクが急ブレーキを踏み追突。196センチの巨体が宙を舞い、配達物はすべて飛び出したが「かなり上手に着地することができた」と、無傷で働き続けたという幸運の持ち主だった。

これまでの野球人生、悲劇を何度繰り返しても“不死身”の左腕はマウンドに帰ってきた。ドラフトは高校卒業から大学時代を合わせて4度指名された。3度目となったダイヤモンドバックスからの指名の際は、メディカルチェックで左肘靱帯(じんたい)の40%が断裂していると診断され、契約を取り消し。大学卒業後にブルージェイズ入りし、昇格1年目に5試合登板した。17年は2勝含む23試合に登板したが、18年5月にトミー・ジョン手術を受け翌年自由契約。リハビリ後、独立リーグでプレーしていた昨季、カブスからオファーが舞い込みメジャーにカムバックした。

転んでも、ただでは起きない。カブスでは、手術前よりも直球の平均球速が3キロ以上アップし、152キロになった。チェンジアップとの緩急で打ち取り、投球の幅も広げて進化した。パワータイプでありながら、四球はメジャー29試合で5個と、決して多くはない。左腕不足の西武では、貴重な先発候補。コロナ禍で来日は開幕直前となりそうだが、頼もしい助っ人が加わる。

 

◆マット・ダーモディー 1990年7月4日、米アイオワ州生まれ。ドラフトを2度拒否後、アイオワ州立大から13年ドラフト28巡目(全体835位)でブルージェイズ入団。16年9月に初昇格。18年5月にトミー・ジョン手術。19年オフのFA後に米独立リーグでプレーし、20年8月にカブスと契約。メジャー通算29試合で2勝0敗、防御率5・13。196センチ86キロ。左投げ右打ち。