ダ、ダン、暖~! 阪神育成選手の小野寺暖外野手(22)が曇天の北谷に鮮やかなアーチを掛けた。5回守備から出場すると、6回2死一、三塁から中日山本の4球目142キロ直球を迷いなくフルスイング。「その前のファウルでちょっと遅れているなというのがあって、ちょっと早めにいこうと思っていた」。左翼後方にある防球ネットの上部にズドン。ムードメーカーの一撃にベンチも大盛り上がりだ。

背番号3桁の快進撃が止まらない。野手の育成選手で唯一1軍キャンプに参加し、7日の紅白戦でチームのキャンプ1号を放つと、実戦で16打数5安打、2本塁打、5打点。矢野監督も「いやいやもう素晴らしいよ。少ないチャンスの中でああやって1本打つっていうのは大したもんやと思うし、総合的に力はある」と大絶賛だ。長打力と思い切りの良さ、そして強肩。残り1枠となっている支配下登録を勝ち取るべくアピールが続く。

サイド1ミリの髪形で臨むキャンプでは笑顔の中心になっている。虎1号を放った紅白戦では当然のようにサイレントトリートメントで出迎えられたが、我慢できず自ら「イエーイ!」と絶叫。ドッと笑いが起こった。一日主将を務めた25日には朝の全体ミーティングで「渋い選手になりましょう!」と先輩陽川のモノマネを披露した。

素顔は心優しい青年だ。母子家庭で育った小野寺は奨学金で大商大に進んだ。入学当初はレギュラーにもなれず、野球部を辞めることも考えた。プロの世界で支配下になり家族に恩返しすることが大きなモチベーションになっている。矢野監督も報道陣に「勇気ある新聞社の人は1面で扱ってあげてよ」と異例の呼びかけをするなどチーム屈指の愛されキャラが、夢に向かって突き進む。【桝井聡】

◆小野寺暖(おのでら・だん)1998年(平10)3月17日生まれ、奈良県出身。京都翔英では高校通算20本塁打で、甲子園出場はなし。大商大で3年春に18打点、4年春は打率5割で首位打者となり、ともにMVP。リーグ戦通算5本塁打。19年育成ドラフト1位で阪神入り。中学時代から母子家庭で育ち、大学には奨学金を受けて通い、ドラフト当日は「育成ではお金を返す手助けにならない」と悔し涙を流した。昨季ウエスタン・リーグでは44試合に出場して打率2割3分3厘、0本塁打、9打点。背番号127。今季推定年俸300万円。183センチ、79キロ。右投げ右打ち。

◆支配下昇格への道 阪神は現在、支配下選手を69人在籍させており、上限の70人まであと1人昇格させる枠がある。今季の育成選手の支配下への昇格は、7月31日まで認められている。

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