阪神藤浪晋太郎投手(26)は今季2度目の登板で粘りの投球を見せたが、初勝利を逃した。初回以外は走者を背負ったが、要所で抑えた。ボークによる失点だけで、6回7安打1失点。昨年までの同僚中日福留孝介外野手(43)との対決も実現し、この日最速158キロで見逃し三振を奪った。リリーフ陣の救援失敗で勝利投手の権利を失ったが、完全復活への道を確実に歩んでいる。

    ◇    ◇    ◇

99球目。藤浪は力の限り、中日代打福留の内角低めいっぱいに直球を突っ込んだ。2点リードの6回2死一塁、2ボール2ストライク。最後の1球はこの日最速の158キロだ。

「孝介さんはいいバッターですし、決め打ちされるとちょっとあれだなと思ったので。結構腕を振らないと仕留められる。イニング的にも勝負どころかなと思ったので腕を振りました」

渾身(こんしん)の1球は要求通り。梅野のミットは動かない。主審飯塚の手が上がる。大先輩は後輩の1球に納得したかのように、静かに三塁ベンチへ歩を進めた。

今季2戦目はホーム開幕ゲーム。2回2死三塁からボークで先制点を献上した後も大崩れしない。味方打線に逆転してもらうと、勝負どころで粘り続けた。

4回1死満塁。7番木下拓から153キロで空振り三振を奪い、大阪桐蔭の後輩でもある8番根尾もスプリットで二ゴロに仕留めた。5回裏2死満塁。今度は大阪桐蔭の先輩になる平田を153キロボール球で振らせ、右拳を握ってほえた。

「ああいう厳しいところで粘ってこそ。苦しい場面も多かったけど、なんとか粘れたかなと思います」

5回以降は今季再び採用したワインドアップから一時的にセットポジション投球へ変更。「セットの方がタイミングが合っていたので」。臨機応変な修正能力も頼もしい。

最後は昨季まで親身になってアドバイスをくれ続けた福留に、感謝の直球を投げ込んで笑顔。6回で7安打を浴びながら、6奪三振2四球で1失点と耐えた。

京セラドーム大阪は決して得意とは言えない球場だった。15年3月29日中日戦以来白星がなく、直近5戦で4連敗。そんな負のイメージを塗り替える粘り腰を披露すれば当然、首脳陣からの信頼はさらに高まる。

5回2失点と粘った開幕戦に続き、2戦連続でゲームメーク。矢野監督は「粘り切れたのは大きかった。だからこそ勝たしてやりたかった」と高評価した。

8回表、3番手加治屋が同点打を浴びた直後もマスクの下から大声で仲間を鼓舞し続けた。またも今季初勝利は逃したが、完全復活へ、エース道を1歩1歩進んでいることだけは間違いない。【佐井陽介】

阪神担当のツイッターはこちら―>

阪神ニュース一覧はこちら―>