ペナントレースが開幕し、阪神佐藤輝らルーキーの活躍が目立つ。そんな中、2軍戦で高卒新人の大記録がひっそりと生まれていた。

ロッテ山本大斗外野手(18=開星)が、3月20日のイースタン・リーグDeNA戦(横須賀)で「開幕戦のプロ初打席で初球本塁打」をやってのけた。1軍でも14年のヤクルト西浦しか記録していない“快挙”だ。育成ドラフト3位からプロの世界に挑む若者は、なぜ振り抜けたのか。オンラインインタビューで衝撃の一打に迫った。【金子真仁】

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背番号124の山本大斗は想像以上の大物だった。「緊張はなかったですね」。イースタン・リーグ開幕戦の8回2死。1番高部、2番三木が連続三振に倒れ、記念すべきプロ初打席が回ってきた。

DeNA田中健二朗投手(31)がマウンドに立つ。今は育成契約でも通算202試合に登板の実績豊かな左腕だ。山本には、相手はさほど関係なかった。

「初球が来たら、絶対に行こうと決めてました」

外角直球をストライクと判断した。迷いはない。右打席で豪快に振り、ライトへ押し込む。白球はフェンスを越えた。

「初球から行こうと思って、真っすぐが来たので自分のスイングをして、その結果が本塁打だったので…とにかくうれしかったですね」

思い切りいけ-。そう言われても誰しもが果敢なわけではない。新人にとっては全ての投手が初対戦。球の軌道を確かめる必要もあるのに、臆せず振れた。開星高時代、指導者から「チャンスだったら初球のストライクを見逃すな」と言われ続けた。

「3球あるうちの最初の1球を見ることで投手も乗りますし、自分にも、見逃して得はそんなにないと思うので。とにかく積極的に。初球を振ることで相手投手にもプレッシャーを与えることができますし」

積極性は別の数字にも表れる。11日までに23打席に立ち、三振は3つ。長打力が売りの高卒新人打者としては、かなり少ない数字といえる。

「開幕してから追い込まれたことも少ないと思うんですよ、たぶん。初球か、初球がファウルだったら次の球を。とにかくストライクが来たら振るようにしてるので。高校まで見てきた球とは全然レベルが違うんですけど、それでも絶対に直球は来るので、その直球をどれだけ仕留められるかだと思うので」

強い意思と技術の一致が、順応の早さにつながる。もちろん、まだ心のブレはある。初本塁打のように外角球は右方向へ押し込むようにしているが、8日巨人戦(ジャイアンツ球場)だけは違った。

「西川がホームラン打ったんですよ」

ドラフト5位の西川僚祐外野手(18=東海大相模)が8回、左中間へ高々と舞い上がるプロ初本塁打を放った。同い年、同じ右打者、同じ外野手。「とにかくすごく体がでかくて、飛距離は自分とは違いますね」というライバルだ。

燃えた。オレだって。9回2死。外角直球に対し、バットをわずかに早くしならせ始めた。

「西川がホームランを打って、自分も打ちたくなって。引っ張る感じになっちゃって」

背筋に力を込める。意思を持って引っ張ると打球は勢いよく伸び、左翼フェンスに直撃。二塁打になった。あと1メートル高ければ、西川を再びリードするプロ2号になっていた。

主砲を夢見る。「4番を打ちたいです」。守備は? 「ライトがいいですね。高校の時もライトをやってたので、ライトをしたいなというのはあります」

支配下選手登録、そして1軍のレギュラー取りへ。1年目のファームでの目標も明確に設定する。

「本塁打の数をこだわりたいので、チームで一番打てるくらいの打者にはなりたいです、今年」

1軍でプロ初本塁打をマークした山口航輝外野手(20)に続けとばかりに、西川と競い合う。打つ分だけ警戒され、壁にぶち当たることもあるだろう。彼らがそこを越えた先に、ロッテの未来が洋々と広がる。

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