巨人菅野が今季初勝利を完封で飾った。直球を微妙に動かす150キロに迫るツーシーム、スプリットを効果的に交え、ゴロアウト12、4奪三振の快投だった。

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菅野は昨季好成績を収めながら、今季はプレートの一塁側を踏むようにした。右投手では元広島の黒田、阪神西勇がいる。ただ誰もがマネできない。私も現役時に一塁側を踏む右腕と組んだ記憶がない。

メリットもデメリットもある。一塁側から投げることで右打者の内角、左打者の外角に角度がつけられる。左打者の内角にもボールゾーンからストライクゾーンに入るフロントドアのような軌道でも投げられる。腰に不安を抱える菅野には負担も少ない。三塁側からなら右打者の外角には左腕で壁をつくり、体の開きを抑えながら最後に腰を強く回して角度をつけなければならず、負担がかかる。

一塁側からは体が少し早めに開き、打者に正対して投げられ、腰への負担が少ない。一方で最大の武器となる大きい曲がりのスライダーは、打者が振りやすいストライクからボールになる軌道は投げにくい。ストライクからストライクの軌道になりやすく、見逃しが減ってくるだろう。

それでも昨季までなかった140キロ台中盤のカットボールがストライクからボールになる軌道で、カバーしていた。初回無死一塁で好調の牧を外角低めのボールになるカットボールで、遊ゴロ併殺打に仕留めたのが象徴的だった。続くオースティンは明らかなボール球のスライダーで空振り三振。一塁側から右打者に体が正対するように向かって右腕を強く振ると、打者が球が向かってきたと惑わされて、つられて振ることもある。かつて三塁側を踏んでいた時に、右打者に対し、意表を突く内角への「インスラ」も得意としていたが、一塁側からなら、より効果が増す。1度抹消されたが、巨人にとって1年間フルで投げてもらわないと困る投手。首位阪神を追うためにも菅野で負けられない。(谷繁元信・日刊スポーツ評論家)