ライアンが“マダックス”になった。ヤクルト小川泰弘投手(30)は、9回2死、99球目で最後の打者を外角低めの直球で空振り三振に打ち取ると、顔をほころばせた。大リーグの名投手グレッグ・マダックスの代名詞である、100球未満の完封勝利を達成。「こういうことができると思ってなかった。ストライク先行で攻める形ができたことで、そこにつながった」とうなずいた。

2つの原点回帰で快投を呼び込んだ。成章(愛知)時代、帽子のつばには「一瞬の苦しみから逃げたら一生の後悔」という先輩からの言葉が書かれていた。「1球1球大事に攻める気持ちで投げられた」。その気迫がマウンドで出た。打者29人中初球ボールは8回のみ。ストライク先行の投球で、中日打線を封じた。

もう1点は「アウトコースのストレートが大事だと改めて感じた」。今季からセットポジション時にグラブを顔付近にまで上げていたが、この日は腹部付近に下げた形に。昨年までのフォームに近づけ「前足にしっかり乗り切って投げることがストレートを投げる上でとても大事。それを探していくうちにそういうバランスになった」と説明。試行錯誤を続け、20年8月15日DeNA戦でノーヒットノーランを果たして以来、1人で投げきった。

前回登板の2日DeNA戦(横浜)では、2回0/3を6失点。出場登録を抹消され、普段の倍以上走り込んだ。中12日の先発に「体力面でも技術面でも気持ちの面でも、いい方向にいった」。今季リーグ登板数10傑に4人が名を連ねる救援陣を休ませる最高の結果。エースの意地を見せつけた。【湯本勝大】

▼小川が99球で3安打完封勝利。小川の完封勝利はノーヒットノーランを達成した昨年8月15日DeNA戦以来9度目だが、100球未満での完封は自身初めてだ。100球未満で完封勝利の投手は17年4月14日ソフトバンク戦の金子(オリックス=92球)以来で、ヤクルトでは15年8月11日広島戦の山中(96球)以来6年ぶり。

◆マダックス 100球未満での完封を意味する言葉。86~08年にブレーブスなどで通算355勝を挙げ、殿堂入りした大投手グレグ・マダックスが由来。通算35完封のうち13度を100球未満で達成した。「精密機械」と呼ばれた名投手にちなみ、同じ結果を残した投手に対して使われる。

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▽ヤクルト高津監督(小川について) 今日文句言ったら怒られるかもしれないけど(笑い)。それまでなかなかパッとしないゲームもあったが、1人で投げきって、チームに勝ちを持ってきたピッチングは素晴らしかった。