24年ぶりの月夜に、史上4人目の大記録を達成した。ヤクルト青木宣親外野手(39)が日米通算2500安打をマークした。「日本生命セ・パ交流戦」の日本ハム2回戦の1回、第1打席で右前打を放ち、マリナーズ・イチローに次ぐ歴代2位のスピード到達を決めた。

1月と3月に新型コロナの濃厚接触者に認定され、合計1カ月の隔離を強いられた今季。もがき続けながら、安打を積み重ねた。漆黒の夜空には、1年で最も月が大きく見える「スーパームーン」と皆既月食が重なり、希代のバットマンの歴史的快挙を天体ショーが彩った。

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スーパースターの笑顔が輝いた。まだ日が沈み切らない1回2死走者なし。青木はカウント3ボールから、真ん中に入った135キロ直球を引っ張った。打球は一、二塁間を抜け、右前へ日米通算2500本目の安打を刻んだ。試合前の円陣では「今日は皆既月食。24年ぶりのスーパームーン。特別な日に勝利して、交流戦優勝しよう」と声がけ。有言実行で、節目の一打でチームを勢いづけた。一塁上で球団マスコットのつば九郎から記念ボードを手渡され、ヘルメットを掲げながら、祝福の拍手に応えた。「特別な日になった。節目の数字を達成することができてホッとした」と胸をなで下ろした。

暗い夜空があるから星は明るく輝ける。自宅待機で体は元気でも、思い切り体を動かせない日々。4月16日阪神戦(甲子園)で2度目の復帰以降、試合前時点の打率は1割8分5厘。「思った通り動いていない」と打ち明けるほどの不振だった。チャンスで打ち取られ、ベンチで悔しさを爆発させる場面も。納得のいく打撃にほど遠かった。

課題を1つ1つ解決していく。日ごろから自身への“観測”は忘れない。「毎日やらなきゃいけないことから、自分が逃げないことだったり。しっかり考えてアプローチしていくのが、すごく大切。諦めないということ」と静かに話した。不調の原因を探り、追究する地道な作業。ビデオを撮って自分の感覚とボールの見え方のズレや、スイングの軌道を見直し、常に変化を恐れなかった。「ヒットはそう簡単に打てない」と断言する。簡単ではないものを2500本も積み重ねた。

もがいてつかんだ大台。「どれも自分にとっては必要なヒット。プロ野球って競争社会ですから、生き残っていくために打たなきゃいけないわけで。そういう気持ちで毎日やっていたので。この1本がなければ先に進めなかったというのがたくさんあった」と振り返った。難しいからこそ、諦めずに挑戦を続ける。「だからヒットを打ちたい」。スターがひしめくプロ野球の世界でひときわ輝くため、これからも目の前の結果にこだわる。【湯本勝大】