交流戦男の1発も、空砲となった。西武中村剛也内野手(37)が交流戦通算78本目の本塁打を放った。3度リードを許し、3度追いつき迎えた7回無死二塁。カウント1-2と追い込まれながら、高めの直球を見逃さなかった。右翼ポール際へ吸い込まれる今季4号。一時勝ち越しの1発は、交流戦通算1位独走の78本目だった。笑顔で「打ててよかったです」と喜んだが、9回に阪神佐藤輝にこの試合3本目のアーチを浴び、逆転を許す悪夢が待っていた。

コロナ禍の苦境を吹き飛ばした、はずだった。前日27日広島戦で、主将の源田が陽性となり、濃厚接触の疑いがある選手を含む8選手が離脱する緊急事態。この試合も8人に代わり、6人が2軍から合流し14人入れ替わる状況下で、中村は「3番三塁」でスタメン出場。第1打席と第3打席に安打をマークしていた。今季2度目の猛打賞で、取られても食らいつく展開を、交流戦を知り尽くしたプロ20年目のバットで演出していた。

昨季は開催されず、2年ぶりの交流戦の舞台。いつも横にいる“守備の相方”がいなかった。「ゲン(源田)のおかげでどれだけヒットがなくなっていることか」。誰よりも近くで見てきたから、その存在の大きさも知っている。離脱を補おうと奮闘したが「いいバッティングができたのでよかったです。(交流戦最多本塁打、最多打点には)特に思うところはありません」と負ければ打った喜びもない。濃厚接触者に特定されなかった5選手は早ければ29日にも合流する見込み。屈辱は勝ってぬぐい去るしかない。【栗田成芳】