阪神ドラフト1位の佐藤輝明内野手(22)が新人左打者では歴代2位の19本塁打を刻んだ。中日戦の6回に福谷から一時同点のソロ。98年の高橋由伸(巨人)に並んだ。6月は打率3割4分8厘、6本塁打、9打点。阪神の新人野手で史上初めて月間MVPに輝いた5月の打率を上回り、6試合を残して早くも本塁打数は並んだ。敗戦の中、2カ月連続の受賞を期待させる充実ぶりだ。チームは2位に5ゲーム差に迫られた。

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白球が高さ4・8メートルのフェンスを越えると、三塁ベンチ付近の虎党が拍手で沸いた。バックスクリーン右、中日ファンが座るスタンド最前列へ放り込む19号ソロ。佐藤輝はゆっくりとダイヤモンドを1周し、今季19回目の「Zポーズ」で盛り上げた。「しっかり自分のスイングができた」。短い言葉に力を込めた。

甘い球を確実に仕留められる。6回1死。中日福谷の131キロチェンジアップが浮いてきた。2回の第1打席も同じチェンジアップに少し崩されたが、しっかり捉えて右飛。今度はより踏ん張りを利かせ、上半身に力を伝えてスタンドまで運んだ。「同点に追いつけるホームランだったので良かったかな」。前日22日に放った左翼フェンス最上部直撃の二塁打を「バンテリンドームだから仕方ない」と表現した22歳。わずか1日で“前言撤回”した。

反省を生かし、同じ手には乗らない。そんなルーキーに矢野監督も「対応力があるし、それが本塁打になるのがテルの魅力。相手が本塁打を警戒した中で打ったのも価値があるし、安打じゃなく本塁打にしているのがらしさ」と賛辞を贈った。

対応力に磨きをかけた6月は66打数23安打、打率3割4分8厘、6本塁打、9打点と打ちまくる。球団新人野手で初の月間MVPとなった5月は打率3割1厘、6本塁打、19打点。6月はまだ6試合残し、すでに本塁打は3カ月連続の6本に到達した。

「しっかり自分のスイングができている。調子が悪い時は自分から崩されていって…。そういう意味では、打ち損じっていうのは少なくなってきている」

確実に手応えを感じ、プロ野球史上初の新人2カ月連続月間MVP受賞に期待が高まる。

19本塁打は新人左打者では98年高橋由伸(巨人)と並んで歴代2位だが「ポジティブにとらえて、またやっていきたい」と早くも前を向く。「しっかり勝ち越して帰るのが一番大事。そこを目指して頑張ります」。昨季3勝9敗と鬼門のバンテリンドームでも、佐藤輝がいれば怖くない。【中野椋】

▼佐藤輝が19号。新人で19本塁打以上は10年長野(巨人)以来19人目。左打者では1リーグ時代の46年に20本の大下(セネタース)98年に19本の高橋(巨人)に次いで3人目となり、2リーグ制後の新人左打者では高橋に並び最多。月別の本数は3月1本→4月6本→5月6本→6月6本とスランプがなく、チーム65試合目で19号は59年桑田(大洋)の58試合目に次ぐペース。桑田がマークした60試合で20号の最速記録には及ばないが、佐藤輝は何試合目で20本打つか。

◆6月のセ野手月間MVP候補 筆頭はオースティン(DeNA)か。リーグ最多タイの7本塁打、単独最多の18打点に加え、打率3割5分3厘と絶好調。同じく7本塁打の山田、村上(ヤクルト)も続く。5本塁打の岡本和(巨人)もまだまだ数字を上げそう。林(広島)はセ最多の27安打で、3割6分5厘の高打率を誇る。さらに15打点の宮崎(DeNA)、打率3割4分3厘の近本(阪神)や3割5分9厘の青木(ヤクルト)も絡んできそうだ。