ノムさん、虎は強くなりました-。阪神が驚異の集中打で連敗を「3」で止めた。3年間指揮を執った野村克也氏の追悼試合で、教え子の矢野燿大監督(52)が打線のてこ入れを敢行。2回に今季初めて4番で起用したジェリー・サンズ外野手(33)のタイムリーを含む5者連続適時打&7連打で5得点。試合をひっくり返し、亡き名将に甲子園で白星をささげた。

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終わらない猛虎劇場に甲子園が沸いた。1点を追う2回2死走者なしの場面で、ヒットパレードの幕が開いた。8番梅野が右前打で出塁すると、9番青柳が初球を左前へ引っ張った。続く近本が同点の右前タイムリー、さらに糸原が勝ち越しの中前適時打で続く。さらにマルテが、さらにさらにサンズが、最後は佐藤輝も適時打と7打者連続ヒット。13年以来となる5者連続タイムリーで一気にツバメを攻め立てた。線となった打線に矢野監督もうなずいた。

「大量得点というのは四球とかエラーとかが絡むけど、そういうことがなく、みんながヒットでつないだというところでいい攻撃ができた。ああいうつながりの野球がうちの野球」

打線に火を付けたのは指揮官の仕掛けだ。DeNAに同一カード3連敗を喫し、打線をてこ入れ。今季、背中の張りで離脱した期間を除けば、開幕から出場58試合すべてで「4番三塁」を務めた大山を打撃不振のため、6番で起用した。4番には今季初めてサンズを指名。新オーダーには今後を見据えた矢野監督の思いが込められていた。

「悠輔が上がってくるというのは優勝に向けて大きなところ。でも4番に置いてちょっと力んでいるかなというのもあったし、何かしら気分転換とか、悔しさとか。そういうことが外すことで出てきたらいいなというところで6番にした」

甲子園が独特の空気に包まれた。この日は阪神でも監督を務めた野村克也氏の追悼試合だった。観客には「野村ノート」がプレゼントされた。矢野監督は野村阪神1年目の99年に、初めて規定打席に到達し、打率3割4厘を記録するなど大きく飛躍。ノムラの教えが指導者としての礎にもなっている。

「野村監督に出会っていなければ僕の現役生活も3割打つとか、20年間やるとか、それもなかった。監督としてこうやってやることも野村監督に出会っていなかったら、なかったと思う。野村監督の教えを伝えていきながら、しっかりやっていければいいなという思いで戦った」

2位巨人も広島に競り勝ち2・5ゲーム差は変わらなかった。長丁場のシーズンはようやく折り返し地点が見え始めたところ。まだまだ勝負は続く。指揮官として先を見据えたこの日の決断、そして戦い方。天国のノムさんも満足してくれるはずだ。【桝井聡】