頼もしすぎる「得点圏の鬼」だ。阪神梅野隆太郎捕手(30)が、値千金の同点打を放った。

1点を追う8回2死一、三塁。梅野の覚悟は決まっていた。「しっかりコンタクトしたら何か起きるんじゃないかと。そこの1点だけに集中して」。甘く入った清水のフォークを振り抜くと、打球は飛び込んだ三塁手村上の左横を抜けていった。行方を目で追いながら、降りしきる雨の中で何度もガッツポーズした。

「自分がカバーするという気持ち、打席に入る前にしっかりリズム、気持ちを整えて。チームの状態がいい悪い関係なく、なんとかカバーしていくのが大事だなって改めて感じた試合」

その直前、遊飛に倒れて悔しそうな佐藤輝の姿を見ていた。勝利への気迫、仲間への思いを込めてバットを振った。

昨季まで選手会長だった梅野。チームを率いる立場として、当時主将の糸原と話し込む時間も多かった。そんな2人の間には、ポジティブな合言葉があった。

「返ってくる、返ってくる!」。

自分が打ち取られても、走者を進塁させることが出来た時。“犠牲”はいつか大事な時に返ってくる-。「次の打席なのか、10打席後に返ってくるのか分からないけど。チームバッティングを自分たちが率先してやることが、年上になればなるほど大事やと思う」。この日は一番大事な場面で、チームを救う安打となって返ってきた。

得点圏打率はリーグ2位の4割。矢野監督も「みんなでね、助け合うというところがリュウ(梅野)の一打になった。本当に、勝負強く打ってくれました」と振り返った。

捕手としても、激しい雨に耐える投手陣を懸命にリード。「長いシーズンやけど、こういう1勝を、取って良かったと言えるような結果を」。頂点を目指して、チームはまた1つになった。【磯綾乃】