日刊スポーツ評論家の中西清起氏(59)と桧山進次郎氏(52)による特別対談の第3弾。阪神の投手コーチと主力選手として、05年リーグ優勝の天国と13ゲーム差を逆転されてV逸した08年の地獄を知る2人が当時の教訓を踏まえ、前半を首位で折り返した矢野阪神の後半の戦いを提言した。【取材・構成=松井清員】

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中西 前半最後は阪神の状態が落ちてきたところで、巨人が選手をそろえてきた。丸も調子を戻してメジャーから山口も復帰した。

桧山 菅野が五輪期間の1カ月で故障なく帰ってくるとさらに怖くなります。

中西 阪神は落ち気味の下降線、巨人は上り調子で前半戦を終えた。2位との2差をどこまであけていけるか。阪神が優勝するには、後半戦の早い段階で5ゲーム以上あけたい。のしかかるプレッシャーの面で。優勝経験選手が豊富な巨人、優勝経験選手がいない若い阪神。競れば断然、巨人が優位だ。でも5ゲーム差以上離せば、プレッシャーも減って伸び伸び戦え、若いチームの良い面が出る。

-2リーグ分立後、巨人1位、阪神2位は16回あるが阪神1位、巨人2位は0回。阪神5度のVは全て巨人が3位以下に落ちた時

桧山 競った展開になると常に優勝争いしている巨人が強い。でも阪神はゲーム差をばかりを見ると、苦しくなるし、試合に集中できない。毎試合コツコツ、自分たちの野球をして貯金をためることを考えればいいと思います。2差まで迫られたと考えるのか、貯金が15あると考えるのかで全然違う。焦りは禁物です。

中西 でも3ゲーム以内ならちょっと怖いな。開幕間もない時期を除くと、巨人に1度も追い越されていない。追い越された時にどういう戦いになるのか。もう1度首位を奪う戦いができるかがポイントになる。

-8月13日の広島戦で再開する後半戦はBクラスの3球団と6カード対戦。巨人、ヤクルト戦が9月までない阪神には追い風の日程

中西 いや、追い風とは言えないよ。前半最後はDeNAにやられたし、春先勝てたのは外国人が出遅れたから。状態は上がっているし、Bクラス相手とかは関係ない。それよりも、五輪期間の1カ月の調整期間がどう影響するのかが心配だ。特に外国人は主力の5人が一時帰国して、再来日後の隔離期間もある。家族と一緒に過ごしてリフレッシュして、阪神はいいチームだとしっかりやってくれるのかどうか。もちろん日本人選手の調整も同様だ。

桧山 難しいですね。シーズン中に1カ月も公式戦がないのは初めての経験。逆に状態が上がってきた巨人が失敗するかもしれない。気持ちは1回、切れると思うんです。27日からパ・リーグとエキシビションマッチが組まれていますが、練習試合は練習試合。給料にも響かない。ましてや、ものすごく暑い時期です。

中西 気持ちを持続させるのは難しい。いかにオンとオフを切り替えられるか。

桧山 それぞれが、試したい部分を勇気を持って試せるか、うまくいっているものをいかに持続させるか。後半戦が始まってヨシいけるぞとなるか、ヤバイぞとなるか。8月中旬までの調整は、本当に重要です。

中西 ある意味、05年ロッテに4連敗した日本シリーズの調整がダブったりする。リーグ優勝から3週間開いて、今岡ら野手陣は「ボールが見えません」と言っていた。ロッテはプレーオフから中5日で日本シリーズに入ってきたからね。

桧山 野手は宮崎のフェニックスリーグで調整しましたが、バリバリの一線級と駆け引きして打つわけではない。ボールを見に行こうという感じだったので。

中西 フェニックスだと、グワーっとアドレナリンが出ないわな。今回の五輪ブレークも1軍が相手とはいえ、パ・リーグとの練習試合。どの球団も条件は同じだけど、難しい調整になることは間違いない。うまく乗り切らないと、後半の開幕から大きくつまずく。

-後半戦は残り59試合

桧山 けが人を出さないことが一番。せっかくのチャンスなので逃してほしくない。優勝がどんなものか経験してもらいたい。経験した人でないと分からない。ぜひ勝ち取ってほしい。

中西 最後まで緊張感、プレッシャーの中で143試合戦えるのは本当に幸せな時間。押しつぶされそうな、胃がキリキリするシーズンはめったにない。そのプレッシャーを楽しみながら優勝をつかんでほしい。(おわり)