ソフトバンクが、球団初の無安打無失点継投を達成した。無安打無失点継投で勝てなかった例は初めてという珍しい記録になった。

これまでは3投手のリレーが最多だったが、この日は6人での継投で、これまた史上最多。カーター・スチュワート投手(21)が5回まで1死球のみの投球で流れを作った。試合は引き分けたが、球団タイ記録3試合連続無失点で後半戦は好スタートを切った。

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スコアボードに、ずらりと「0」が並んだ。得点に加え、安打もゼロ。勝てはしなかったが、工藤監督は誇らしい表情だった。「すごいですね。すばらしいですよ。1本もヒットを許さないというのはね」。6人でつないで、9回まで1安打も許さず。球団初の無安打リレーで、球団タイ記録の3試合連続無失点。後半戦最初のカードは、2勝1分けの好発進になった。

快挙への流れを作ったのは、緊急マウンドのスチュワートだった。先発予定だった和田が、左肩のコンディション不良で14日に出場選手登録を抹消。急きょ代役に抜てきされ、プロ初先発を堂々と勤めあげた。

初回は先頭浅間に死球を与えたが、以降は1人も走者を出さず、最速157キロの直球とカーブ、スライダーの組み立てで9個の三振を積み上げた。工藤監督は「代えるのも申し訳なかったんですけど。4回が終わったときにラスト1回と言ったのでね。勝たせてあげたかったですね」。緊急登板だったことも考慮し、5回を投げ80球のところで継投に入った。右腕の快投に応え、津森、嘉弥真、松本、板東、甲斐野が無安打のリレーを最後までつないだ。

スチュワートは18年に大リーグでブレーブスからドラフト1巡目指名を受けたが、入団合意に至らず、19年5月に6年契約でソフトバンクに加わった。1年目は3軍で鍛え、昨年は2軍の先発ローテーションで経験を積んだ。今年4月に1軍初昇格したが、4試合に救援登板し防御率10点超えで降格。力不足を実感し「2軍に落ちてから体も鍛えて、パワーアップしていると思う」と、さらなるレベルアップに励んできた。

突然のチャンスが訪れたこの日、初勝利とはいかなかったが「初めての1軍の(先発)登板で今日のような投球ができて良かったし、いい経験ができた」と笑った。逆転優勝を狙う後半戦。新たな戦力が、強烈なインパクトを残した。【山本大地】

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ソフトバンク津森(2番手で2/3回を1三振無失点)「1人1人しっかり抑えることを考えて投げました。もっと調子を上げていけるように頑張ります」

ソフトバンク嘉弥真(3番手で1四球も1/3回を無失点)「先頭バッターの四球はしっかり反省します。でも、無失点で終えることができて良かったです」

ソフトバンク松本(4番手で1回を1四球無失点)「マウンド上ではノーヒットということは頭になかった。失点しないことだけを考えて投げました。結果、ノーヒットリレーができて良かったです」

ソフトバンク板東(5番手で1回無失点)「8回で0対0、ノーヒットという状況でいつも以上に緊張しました。でも自分のピッチングをすることだけを頭に入れて投げました。良い投球ができて良かったです」

▼ソフトバンクが6投手のリレーでノーヒットノーランを達成した。公式戦で継投によるノーヒットノーランは17年6月14日巨人以来5度目(日本シリーズでは07年<5>戦の中日が記録)。6投手は06年4月15日日本ハムと前記巨人の3人を上回る最多人数だ。

▼ノーヒットに抑えながら0-0で引き分けたのは37年4月8日タイガース(大東京戦)75年6月21日阪神(広島戦)に次いで3度目。過去2度は5回コールドで、37年は藤村富、75年は江夏が完投。9回試合でノーヒット引き分けは初めてだ。他に、39年5月6日南海が宮口、平野のリレーで阪急を無安打に抑えるも1-2で敗れており、ノーヒットに抑えて勝てなかったのはコールドの2試合を含めて4度目。