6連勝していた右腕でも、負の連鎖に縛られたチームを救えなかった。東京五輪で金メダルを手にした日本ハム伊藤大海投手(23)が21日、楽天戦(札幌ドーム)で五輪後初登板したが、5回10安打で自己ワーストの6失点(自責5)。自身7試合ぶりの黒星を喫した。チームは後半戦5試合を終えて勝ち星がなく、22日にも自力優勝の可能性が消滅する。

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ボールが、まったく意図したところへ投げられない。伊藤にとって43日ぶりの先発マウンドは、苦しかった。プロ入り後、初めて見せる不安定な姿だった。四球と連打でいきなり背負った初回1死満塁の大ピンチ。岡島への投球が一旦はボールと判定されたが、楽天ベンチのリクエストで死球に変わり、押し出しで先制を許した。さらに、内野ゴロと味方の失策で一挙3失点。

伊藤 (押し出し死球で)いったん、気持ちが切れてしまったのが未熟さ。ボールの走りだとか、そういうのは、特におかしいなっていうのはなかったけど、いつもと違って修正をかけきれなかった。

終わってみれば、5回で10安打を浴びて自己ワーストの6失点(自責5)。勝てば、パ新人では71年ぶりという7戦7勝の歴史的な記録を逃した右腕は「全然ダメですね」。5月21日西武戦(メットライフドーム)以来、ちょうど3カ月ぶりの敗戦を受け止めた。

東京五輪では、本来の先発ではなく、中継ぎとして3試合に登板。調整法の違いはあったはずだが、言い訳はしなかった。チームに復帰後も17日オリックス戦(ほっともっと神戸)、19日同戦と、先発予定が2度も雨で流れる不運もあった。「(雨天中止の影響は)あるにはあったけど、それを乗り越えていくような選手にならないといけない立場。そこに応えられなかったことが、負けたことよりも悔しかった」。すでに、エース候補を自覚はたっぷりだ。

栗山監督は「プロ野球でやっていく以上、ものすごく大きな宝物を得た試合だったと思う。悔しいけど、これを何倍にもして返してくれると思う」と期待を込めた。チームは22日にも自力優勝の可能性が消えるが、未来を開く若くて強い芽は、確実に育っている。【中島宙恵】