必死のパッチで大台をつかんだ。巨人高橋優貴投手(24)が中日打線を5回2安打無失点に封じ、プロ初の2ケタ10勝目を挙げた。

4回には今季初安打となる適時二塁打をマーク。勝利投手目前の5回2死満塁では左足がつり、1度ベンチに下がった。あと1死。再びマウンドに戻り、代打福田を三直に仕留め、7月11日以来の勝ち星でリーグトップタイに浮上した。こん身の100球を雨で涙をのんだ後輩たち、自宅で待つ愛娘に届けた。

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見せたい姿があった。高橋は100球の粘投で49日ぶりの白星を挙げた。勝利投手の権利をかけた5回、突如制球が乱れ3四球で満塁。2死として、代打福田への初球142キロ直球を投じた後に左足がつった。1度ベンチに下がって治療を受け「痛かろうが、何があろうが、投げると思っていた。どうなろうが、この回だけは」とマウンドへ。3球連続のスクリューで三直に仕留めた。

後輩たちに、大きな背中を見せた。今夏の甲子園に出場した母校・東海大菅生は17日の大阪桐蔭戦で追い上げムードの8回途中、無念の雨天コールド負けを喫した。「悔しい思いが、これから良いものに変わってくると思う」と思いやった。自身も高校3年の夏、西東京大会決勝でリリーフ登板も、9回サヨナラ負け。悔しさを味わったからこそ、今の輝きがある。

1歳半の愛娘には、かっこいいパパの姿を示した。テレビの画面越しで父親の存在を認識できるようになってきたという。「『お父さんはこういうことやってるんだよ』って言ってもらえるようになってくれれば。映るということも意識したい」と娘の記憶に焼き付けた。4回1死二塁の打席では、右中間への適時二塁打を放ち、自らを援護。今季38打席目での初安打に、二塁ベース上で笑顔で右拳を掲げた。

チームの勝ち頭としての使命を果たした。元日に「1年間投げきる」と決意し、開幕から唯一、ローテを守る。この試合が五輪中断から再開後の14戦目で、24日広島戦のメルセデス以来となる先発投手の白星を挙げた。初めて2ケタ10勝に到達し「活躍して結果を出したら、もっといろんな人に夢を与えられる」。ペナントレースは大詰めへと進む。後輩たち、娘、そしてファンに、見せたい姿がもっとある。【小早川宗一郎】