逆転優勝の使者が現れた。ソフトバンクのリチャード内野手(22)がプロ初アーチを豪快な逆転グランドスラムで飾った。

プロ初安打を放った前日4日に続き「7番三塁」でフル出場。1-2の4回1死満塁でオリックス増井からペイペイドームの左中間席中段へ運んだ。7回にも左翼へ2号ソロを放ち、計6打点。チームを連勝に導いた。右の大砲候補が5年連続日本一へ起爆剤になる。

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リチャードが丸刈りにしたのは自分へのカツだった。1軍昇格前の8月27~29日の大阪・舞洲の2軍遠征。身に覚えのない腰痛が突然襲ってきた。「今、腰が痛くなるっていうことは…。これは気が抜けとるな」。バリカンを所持していたスタッフに直訴し、頭を丸めた。「大阪は熱すぎて…。気合も含めてです。でも(丸刈り頭に)直射日光の方が暑い。全然涼しくならなかったですね」。東京五輪イヤーに合わせて? 頭頂部を5ミリ、側頭部を0・5ミリに刈った。誰の指示でも、チームの流行でもなかった。

そして8月31日のナイターの1軍楽天戦を見終わって床につく直前、1軍初昇格を告げる電話を受けた。プロ4年目でようやく訪れた瞬間。「そこから目が覚めて、寝られずに準備をしました」。午前1時まで心臓の鼓動は激しかった。この日は1軍で初めての満塁機。「今日は人生で一番集中しました」。丸刈りの気合が、緊張に打ち勝った。【只松憲】