広島鈴木誠也外野手(27)が、球団では05年新井以来となる5試合連続本塁打をマークした。2回に中日松葉のカーブを左翼席に運んだ。4試合連続となる先制弾も、チームは逆転負けで連勝は3で止まり、5位タイに転落した。1人止まらない主砲は、9日中日戦(マツダスタジアム)で球団記録に挑む。

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獲物を捕らえたように、テークバックを取ったバットのグリップの位置はピタリと止まった。2回、鈴木誠は中日松葉の105キロカーブをしっかり引きつけ、バット一閃(いっせん)。高々と舞い上がった打球は、左翼席後方のコンコースに着弾した。見逃した初球137キロから球速差32キロの緩い変化球にも、自分の間合いから力強いスイングを繰り出し、思い切り振り抜いた。球団では05年新井以来の5試合連続本塁打だ。だが、チームの敗戦に「負けたので」と試合後は多くを語らなかった。

この日の試合前、侍ジャパンの稲葉監督と再会。東京五輪では全試合4番を務め、金メダルを獲得した。国を背負い、1球、1打に喜怒哀楽を爆発させる大舞台が、今季長く苦しむ広島の主砲を原点に立ち返らせた。「野球を楽しむのが、僕のスタイル。侍を通して、本当の自分らしさを感じた」。前夜は今季初のサヨナラ勝利に、ヒーローとなった坂倉と笑顔で抱き合って、喜びをあらわにした。

四六時中、打撃のことを考え「趣味が野球と言えるくらい」の男が、自分らしさを取り戻した。五輪後、22試合で打率3割3分3厘、10本塁打、22打点。前半戦では新型コロナウイルス感染やワクチン接種による副反応があった肉体面の不安は払拭(ふっしょく)され、技術面でも手応えを口にするようになった。それでも、自身初の月間MVPを受賞した会見では「諦めることは簡単なんですけど、もがくことは誰でもできると思うので、本当に諦めず、最後までやりたいなと思います」と、決意の言葉に悔しさをにじませた。

月が替わって、ギアはさらに上がった。9月は7試合で打率4割2分9厘、6本塁打、8打点、OPS15割9分1厘。チームの連勝は止まったが、主砲は止まらない。9日には、6試合連続本塁打の球団記録がかかる。【前原淳】

▼鈴木誠が3日ヤクルト戦から5試合連続アーチ。5試合以上の連続本塁打は昨年の佐野(DeNA)以来で、広島では05年に6戦連発の新井以来6人目となった。鈴木誠は5試合とも4番での1発。5戦連発をすべて4番で記録したのは、球団では71年衣笠、97年江藤に次いで24年ぶり3人目。