虎の4番が最後に意地を見せた。3点を追う9回に、阪神ジェフリー・マルテ内野手(30)が起死回生の18号同点3ランを放った。チャンスで主軸がことごとく凡退し、敗戦濃厚の試合展開でドローに持ち込んだ。2位ヤクルトに3・5ゲーム差を維持し、接近を許さなかった。

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雨降る神宮にラパンパラがさく裂した。1-4と3点ビハインドの9回1死一、二塁。阪神4番ジェフリー・マルテ内野手が豪快にバットを振った。

カウント2-1から守護神マクガフの低めに落ちる変化球に反応。打球は低い弾道で左中間席で待つ虎ファンのもとに飛び込んだ。崖っぷちから試合を振り出しに戻す起死回生の18号3ラン。マルテは「ホームランとかは狙わずにシンプルに後ろにつなぐだけだった。その前の打席で打つことができなかったから、あの場面でいい結果を出すことができて良かったよ」と興奮気味に振り返った。

「打ち直し」の1発だった。7回無死一、二塁の好機で、内角高めの直球を強振。大飛球が左翼ポールの上を通過した。ファウルの判定に、矢野監督は即座にリクエストしたが判定は覆らず、“幻弾”となった。結局、邪飛に倒れ、下を向いて悔しがった。指揮官は「1個前のリクエストも際どいところやったから、『打ってくれ、打ってくれ』と思ったらホンマに打ってくれた。みんなのモヤモヤを吹き飛ばしてくれるような」と喜びを爆発させた。

フラストレーションのたまる展開だった。3回には1死満塁で3番マルテ、4番大山が連続三振。5回にも無死満塁の好機で主軸が倒れて無得点に終わっていた。雨による21分間の中断を挟んで3時間52分のロングゲーム。拙攻続きのイライラをひと振りで吹き飛ばしたマルテは「自分だけでなく、みんなが良い仕事をできているし、みんなの諦めない姿勢が今日のような結果を生んだと思う」と胸を張った。

価値あるドローだ。負ければ、ヤクルトに2・5ゲーム差と再び接近を許すところだった。矢野監督は「普通にいけば、あのまま終わってしまう方が(確率的に)高いんで、そこを同点に追いつけたのはすごく価値がある」と力を込めた。勝ちに等しい引き分けで、首位の座をしっかりと固めた。【前山慎治】

▼マルテは今季18本塁打中、肩書のつく「殊勲本塁打」が過半数の10本と、価値あるアーチを連発している。本塁打に限らぬ殊勲安打の数は24本で、チーム最多。セ・リーグ中でも(1)岡本和(巨人)27(2)村上(ヤクルト)25に続き、リーグ単独3位の勝負強さだ。

▼阪神は今季5度の引き分け試合中、4度がビハインドを追いついてのものだ。前回は9月5日巨人戦で、6回表終了時0-6の6点差という劣勢から巻き返した。4試合の得点差合計は13点で、1試合平均3・25点のビハインドを挽回している。

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