苦労人のイケメン右腕が悲願のプロ初勝利を手にした。

オリックス山崎颯一郎投手(23)がロッテ打線を6回途中2失点に抑え、6度目の先発で初白星を挙げた。

19年にトミー・ジョン手術を受け、育成契約からはい上がった。ロッテのマジック点灯の機会を5度目も阻止。首位に連勝で、1ゲーム差に迫った。

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艶やかな肌に、大粒の汗が滴る。山崎颯が首位を相手にプロ初勝利を挙げた。

「序盤に2点取られて苦しい展開だったけど、野手のみなさんが打って守ってくれてリラックスして投げられました!」

プロ5年目で6度目の先発マウンド。6回途中を2失点にまとめて記念球をゲットした。ロッテのマジック点灯を阻止。お立ち台でウイニングボールを見せると、端正なマスクにえくぼが輝いた。

悪夢を乗り越えた。19年5月8日の2軍ソフトバンク戦。先発で4回2死を取った、次のタイミングで「投げた瞬間に『ブチッ』って右肘が鳴ったんです…」。その年の8月に右肘内側側副靱帯(じんたい)再建のためトミー・ジョン手術を受けた。

待っていたのはリハビリ生活と育成契約。「絶対にはい上がってやろう」と暗い顔は見せなかった。“けがの功名”もあった。「ボールを持たないじゃないですか? だから、投げ方を忘れちゃって…」。本来の投球フォームを見失い、ゼロから作り上げた。本塁に正対し、三塁側を向いて振りかぶるダイナミックなフォームは「動作が少ないので、ブレが少ない。今年の5月に自分で考えて、投手コーチに相談したんです」と説明。身長190センチから投げ下ろす角度ある直球に威力が増し、今では最速155キロを誇る。

高卒5年目での初勝利は親への恩返しの思いを込める。「遠回りじゃない。(記念球は)実家に。今日は来てないんですけど(先発が)ホームのときはずっと来てくれた。できれば手渡しで」。中嶋監督は「いつか勝つだろうなと。早めに勝ちをつけてあげたかった。1つ勝ってスッと入れるかな」と次回登板にも期待した。

これで貯金10。首位ロッテに連勝でカード勝ち越しを決め、ゲーム差は1。山崎颯が甘いフェイスで波に乗せた。【真柴健】

◆山崎颯一郎(やまざき・そういちろう)1998年(平10)6月15日生まれ、石川県出身。小3年で野球を始め、敦賀気比では2年夏と3年春に甲子園出場。16年ドラフト6位でオリックス入団。19年に右肘手術を受け、20年は育成契約。同年オフに支配下に復帰した。190センチ、90キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸450万円。

 

▽オリックスモヤ(5回に3年連続2桁となる10号逆転3ラン)「甘く入ってきたボールはしっかりと捉えていこうと思って打席に入っていた」