ノリノリで逆転Vだ。阪神大山悠輔内野手(26)が先制決勝の18号2ランを放ち、連敗を3で止めた。0-0の4回。登場曲が懐メロ企画のこの日、CHAGE and ASKAの「太陽と埃の中で」に乗って左中間席に運んだ。5回にはラテン系の曲に乗ったジェフリー・マルテ内野手(30)も20号3ランで中押しし、3週間ぶりの2発で快勝。3、4番が貧打脱出を予感させ、1ゲーム差で追う首位ヤクルトを猛追だ。

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追いかけて、追いかけても、いっこうに落ちてこない。甲子園に乾いた打球音が響くとナインが、1万4073人の観客が、雲1つない夜空を見上げた。大山がかち上げた滞空時間6秒28の放物線は、ファンの思いを乗せて中堅左のスタンド最前列に着弾。少し待った分、割れんばかりのメガホン音が奏でられた。

「将司(伊藤)が頑張っていましたし、とにかく先制点を取りたいと思っていたので、良いホームランになったと思います」。

広島にまさかの3連敗を喫し、この日も左腕笠原から得点を奪えず重苦しさが漂っていた0-0の4回無死一塁。カウント0-3から、真ん中137キロ直球をグッとこらえて見逃した直後。また高め外寄りに、同じ137キロが来た。待ってましたのフルスイング。これぞ4番だ。4試合ぶりの先制18号2ランで、一気に甲子園の空気を変えた。

この日は「懐メロ」企画で、登場曲は選手が選んだがかつての名曲が流された。大山はCHAGE and ASKAの「太陽と埃の中で」をチョイス。追いかけて、の歌詞に、主将としての強い思いも乗せたのかもしれない。4番復帰後7試合で23打数5安打。安打数は多くない中、うち4本が打点つきだ。「常に勝ちたいと思っています」。ここ一番での1本を欲していた。

5回には3番マルテの20号3ランで突き放した。チーム23日ぶりの1試合2発で連敗を3でストップ。矢野監督は「そういうのが最近なかったんで。きっかけにしながら、残り19試合をしっかりやっていけるようにつなげてほしい」と目を細めた。9月は月間打率3割1分3厘だった背番号3については、「そんなので好調と言われたら困る」と10月の猛スパートを求めた。

首位ヤクルトも勝利し、1差でぴったりと追う。大山は試合後、「勝」を4度も口にした。「とにかくチームが勝てるように、チームの勝利に貢献できるように全力でプレーしていきたいと思います」。追いかけて、追いかけて、強い執念の先に、つかみたいものがある。【中野椋】

 

◆なぜ懐メロ? 阪神は例年、音楽と野球観戦を楽しめる「虎フェス」を行っている。19年7月のヤクルト戦前には、米米CLUBの石井竜也が「君がいるだけで」を熱唱。だが、昨年はコロナ禍もあってゲストを呼べず、7月の広島戦でファンに募った曲を登場曲にするイベントを開催。「Official髭男dism」の「宿命」に乗って糸原が決勝弾を放った。今年は選手自身が選んだ1日限定の「懐メロ」を登場曲にした。試合前にはチアのタイガースガールズが、サングラス姿でラッツ&スター「め組のひと」を踊って盛り上げた。