「投手4冠王」が貫禄の完封スタートを決めた。パ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージが京セラドーム大阪で開幕。オリックス山本由伸投手(23)がロッテ打線を4安打完封し、今季の連勝を「16」に伸ばした。初回の1点を守り切る「スミ1完封」で無四球の10奪三振。チームはリーグ優勝による1勝のアドバンテージを加えて2勝。日本シリーズ進出の確率は96%だ。

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最速157キロの剛腕山本が、スウッとカーブを抜いた。150キロ超の直球に織り交ぜるブレーキングボールは効果的だった。「序盤、毎回ランナー許す苦しい投球になっていたので、カーブに助けられたかなと思います」。初回2死二塁、5番レアードにフルカウントから真ん中128キロカーブで見逃し三振を奪った。4回2死三塁では6番山口を外角131キロカーブで金縛りにさせて見逃し三振。単打4本でロッテを完封。126球のうち22球と、要所でこのカーブを有効活用した。

カットボールにスライダー、フォーク、ツーシーム…。多様な球種を操るが「初めて習得した変化球がカーブ。みんな投げますよね? 小学生の頃は肩、肘に影響が出るからと、投げるのが禁止だったんです」。小学1年で野球を始めた当初は捕手や二塁手で、投手は兼任。「変化球に憧れを」と練習で禁止だった「禁断のカーブ」は、庭や公園で行う「ゴムボール野球」で覚えた。「握りも投げ方も、何も変えてない」と“由伸カーブ”は16年目。「遊び心ですよ。今でもみんな、キャッチボールでは楽しく変化球の練習をしたりする。そのイメージです」。好奇心が生んだ武器だ。

スミ1完封に「途中からもう少し点が欲しいなと」と笑いを誘いながら「ドキドキしたけど勝ち切れてホッとした」と胸をなで下ろした。5回以降は「修正して低めに」と1人の走者も許さなかった。最終戦で球団新の15連勝を飾ってから中15日と休養十分のマウンドだったが「1イニングずつ。最後まで投げきって、中継ぎを助けようなんてことは全く思ってない」と赤裸々トークもさく裂した。

最多勝、最優秀防御率、勝率第1位、最多奪三振の4冠エースにふさわしい圧倒的な勝ちっぷりで、チームはアドバンテージを含む“1勝1由伸”で2勝。中嶋監督は「もう山本、山本、山本ですね。フォークがイマイチだった中、別のボールで試合をつくるというのは彼の素晴らしさ」と絶賛。山本はお立ち台で「声援、拍手が力になった。とにかく日本一を」と今季最多の1万7915人に約束した。【真柴健】

▼山本が10三振を奪って無四死球完封勝ち。プレーオフ、CSの完封勝ちは18年1S<2>戦でノーヒットノーランを達成した菅野(巨人)以来だが、2桁奪三振の無四死球完封は初めて。日本シリーズでも00年<5>戦高橋尚(巨人)が記録しているだけで、ポストシーズン史上2人目の快挙だ。プレーオフ、CSの1-0試合は8度目で、1-0完封勝利は06年1S<1>戦松坂(西武)同年2S<2>八木(日本ハム)に次いで3人目。ポストシーズンで初回の1点を守り切った「スミ1完封」は日本シリーズの94年<2>戦槙原(巨人)以来2人目になる。また、山本は15連勝でシーズンを終了。2桁連勝継続中の投手がプレーオフ、CSで登板は10人目となり、連勝を伸ばしたのは13年田中(楽天)以来6人目。