負けなかった。だが、勝てなかった。巨人は8回に広岡の一塁ヘッドスライディングでつかんだ適時内野安打で追いついたものの、引き分け。3敗1分けで、3試合を残して終戦を迎えた。原辰徳監督(63)は「ベストを尽くした中でこういう結果になったというところ」と受け止めた。

思い通りにいかない1年だった。エース菅野が4度の離脱。3人の新外国人は早期帰国。井納と梶谷のFA組は不振と故障、坂本と吉川は骨折で離脱。丸は極度の不振に陥った。常に『不運』に見舞われた。だが、原監督は信念を貫いた。

「勝負は時の運。だが『時』は変えられる」

今夏、原監督が東京五輪前に侍ジャパン稲葉監督に贈った言葉だ。指揮官も自分を、チームを信じて動いた。離脱者が相次いだ6月上旬、東京ドームで試合前の練習前に神主を招き、おはらいした。全員が目を閉じ、好転を願った。

試合でも動き続けた。スタメンは4番岡本和以外は目まぐるしく変更。先発ローテも9月から中5日と中4日の間隔で、5人で担った。だが、結果的に9月以降は大失速。リーグ3連覇も逃し、風当たりも強くなった。だが、指揮官は前へ前へと思考を巡らせた。

「振り返る反省は必要。でも(過去は)引きずったところで愚痴しかない」

CSファーストステージではウィーラーの犠打、8人継投など『時』を変えようともがき、2位阪神を撃破。だが、上半身のコンディション不良でCSを欠場した岡本和の穴は大きかった。11日の第2戦では中4日で先発したエース菅野が散った。守備も乱れ、打線も沈黙。願い続けた追い風は最後まで吹かなかった。

時計の針は戻せないが、進めることはできる。来季について聞かれた原監督は「簡単に口にするような部分ではなくて、しっかり考えた中で伝えることの方が正しいのかな」と、思いはいったん胸の奥にしまった。「1年間いろんなことがありながらね、選手たちもスタッフもよく頑張った」。歩みを止めることなく、来季こそ最高の時を刻む。【浜本卓也】

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