「ノムラの教え」を注入だ! 阪神は15日、野村克則2軍バッテリーコーチ(48)の就任を発表した。背番号は「87」で、年俸は1500万円。兵庫・西宮市内の球団事務所で入団会見が行われ、父である元阪神監督の野村克也氏(享年84)の教えと自身が15年間のコーチ業で培った指導で、次世代の虎の正捕手を育てる決意を明かした。(金額は推定)

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カツノリが指導者となって、再びタテジマに袖を通す。会見に登場した野村コーチは、柔らかい表情ながらも熱く語った。「僕の基盤になっているのは、野村監督からご指導いただいたもの。野村監督の考え方プラス自分がやってきたものを掛け合わせながら、あとにつないで、残せていければいい」。現役、コーチ時代にヤクルト、阪神、楽天で学んだものに、自身の15年の経験をプラスした「ノムラ+カツノリの教え」を、惜しみなく注入する。

阪神復帰は、巨人にトレード移籍した04年1月以来だ。2軍バッテリーコーチとして、次世代の正捕手を育てることが役目。今季1軍は30歳の梅野、28歳の坂本の2人が主にマスクをかぶった。2軍には来季大卒2年目の栄枝、高卒3年目の藤田、今年のドラフト7位指名の京都国際・中川勇斗捕手(3年)と好素材が多い。今季まで楽天のファームで育成捕手コーチをしていたため、阪神の選手を見る機会はなかった。まっさらな状態から選手たちの力を把握していく。

熱血指導者だ。野村コーチは「下半身を鍛えるしかない。涙が出るくらい鍛えてあげたい」と、早くも鬼コーチ宣言。「根気と情熱を大事に選手と向き合うのがモットー」と話し「人間的な成長なくして技術的な成長なしと言われていた」と野村監督のように野球に取り組む姿勢を大事にするように指導していくつもりだ。

父が監督を務めた99年から3年間はすべて最下位だった。甲子園での追悼試合となった6月29日ヤクルト戦では、野村コーチは「不名誉な結果でしたが、チームの基盤とか、父がいろんなものを残したと思っています」とビデオメッセージで話していた。父のように数年後に花が咲く基盤を2軍で築いていく。【石橋隆雄】

〇…来季高卒3年目となる藤田は野村2軍バッテリーコーチの指導に「食らいつく」と話した。入寮時には父野村克也氏の著書「野村ノート」を持参し学んできた。「本ではなく野村さんの技術を肌で感じることができるので楽しみ。野球の技術のことも、もちろんですけど、試合中の考え方や野球以外の部分も聞いてみたい」と目を輝かせた。今季は2軍で32試合出場もスタメンマスクは6試合。野村コーチの教えで、まずは2軍の正捕手の座を奪う。

〇…阪神矢野監督は野村2軍バッテリーコーチの熱さに期待した。「何せ熱い男なんでね。カツノリに若い捕手を見てもらうのは頼もしい」と、若虎を鍛え上げることを望んだ。嶌村球団本部長も「引退後も数球団で1、2軍問わずコーチ経験豊富。いろんな引き出しを持っている。野村監督のご子息なので、配球面などを若い時からたたき込んで1軍の場に立つ選手を多くつくってもらいたい」と、指導を楽しみにしていた。

◆野村克則(のむら・かつのり)1973年(昭48)7月23日生まれ、東京都出身。堀越、明大を経て、95年ドラフト3位でヤクルト入団。当時父克也監督が「長嶋にならって」と背番号を33に、登録名も「イチローにちなんでカタカナでカツノリ」と野村監督が独断で決定した。阪神、巨人、楽天でもプレーし、06年に現役引退。巨人時代の04年だけ本名でプレーした。通算222試合で4本塁打、17打点、打率1割8分5厘。引退後は楽天、巨人、ヤクルトでコーチを歴任。今季は楽天の育成捕手コーチを務めた。178センチ、84キロ。右投げ右打ち。