ロッテ岡大海外野手(30)を初めて取材したのは2011年春。東京6大学野球の新人戦だった。明大に、すらりとした長身から150キロ超を連発している2年生右腕がいた。

まず球速に驚き、次に選手名鑑を見て名前に驚いた。当時の紙面に載ったコラムから一部抜粋する。

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かの有名なスポ根テニス漫画「エースをねらえ!」の主人公の名前と同じ読み方。「上戸彩の実写ドラマを見たことがある」程度で、名の由来もテニスとは無関係(兄・大介さんと同じ「大」の字をつけた)だが、地で泥臭い青春を演じるドラマ性を持っている。

神宮初マウンドは5月31日。法大戦2番手で登板すると、いきなり150キロを記録して初登板初勝利。翌日の立大戦では、左翼中段へ大学1号満塁弾を放った。自ら点を稼ぎ、球数わずか16球で2勝目を挙げた。

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その日取材に来ていたのは私と、一回りほど年上の他社の女性記者のみ。世代ではないが知識はあったので、お蝶夫人や宗方コーチにあたる人はいないかと、雑談が妙に盛り上がった覚えがある。

岡は外野との二刀流だった。が、気持ちは投手に寄っていた。「投手で活躍して、プロで星野さんの下でやりたい」。倉敷商-明大の先輩で、18年に亡くなった星野仙一氏(当時楽天監督)の名前を挙げて話していた。

あれから10年がたった。21日、岡は二刀流でア・リーグMVPに選出されたエンゼルス大谷に言及した。日本ハムで4年間、同僚だった。大リーグの試合もチェックしていた。

「ただただ、すごいと思います。みんなが目指す存在と言いますか、僕も含めて、思います。僕はまあ、まず打つ方でしっかり。150キロ? いやいや、もう無理です(笑い)」

岡にとっての守備は剛球を投げることではなくなった。しかし豪快なダイビングキャッチでたびたび観客をわかせた。打棒は健在で、サヨナラ弾などインパクト大の戦績を残した。

出場110試合はキャリアハイ。先発起用が定着したのはシーズンも終盤だった。「続けてスタメンで出させてもらって、改めて野球の楽しさを感じました。そういうのを来シーズン、ずっと続けていきたいと思います」。

中堅でも右翼でも、位置は気にしない。意識するのは試合に出続けること。「一番は投手。スピードにこだわってやっていきたい」とエースを狙っていたころから、目指す姿は大きく変わった。けれど今、野球が楽しい。来季は開幕からレギュラー出場することを念頭に、若手より一足早くZOZOマリンでの秋季練習を打ち上げた。【遊軍 鎌田良美】