オリックス山本由伸投手(23)が球界最高先発投手の称号を得た。故沢村栄治氏を記念し、シーズンで最も優れた先発完投型の投手に贈られる「沢村賞」の選考委員会(堀内恒夫委員長)が22日、都内で開かれ、選考基準全7項目中5項目をクリアした山本が初受賞で選ばれた。

   ◇   ◇   ◇

重鎮たちが新風の受賞を待望した。日本シリーズ2戦目まで沢村賞の山本を含め、若手先発の台頭が顕著だ。堀内委員長は「宮城投手をどうしたらいいんだろう? 2人受賞でもいいかなと、少しは(考えた)」と他の委員に諮ったという。山本との成績差はあり、1項目しかクリアしていない。だが投球内容は充実しており、堀内委員長自身もルーキー時に成績差はあったが村山実氏とダブル受賞していた。最終的には「もっと大きくなる投手なので来年以降を期待している」と強くは推さなかったが、新鮮なノミネートだった。

山田氏は「高卒2年目にはとても見えない。奥川投手にも同じことが言える」と言った。さらに「完封した高橋は生で見たことがなく、昨日テレビで見て、こんなにすごい投手がいるのかと驚いた。あの投げっぷりと生きの良さは最近では見かけないタイプ。全力投球をしながらも完投能力もある。日本シリーズの4投手はプロ野球界に新しい風を吹かしてくれる存在になっていくと期待している」と胸を躍らせた。

優勝球団以外にも新芽は芽吹いている。平松氏は昨季新人王の広島森下、ルーキーイヤーで2ケタ勝利の日本ハム伊藤の名前を列挙。そして山本に次ぐ173回2/3を投げた西武高橋は15~16勝の可能性を秘めていると具体的に触れた。「来年は沢村賞になれるように努力をしてほしい。楽しみな投手がたくさんいる」と広い視野で見守る。

沢村賞の金看板に誇りを持っているだけに、苦言も出た。堀内氏はセ・リーグ勢に厳しかったが、山本に次ぐ4項目クリアの中日柳に「もう少し頑張れば手が届くところに来る」と奮起を促した。今季はコロナ禍で9回打ち切りとなった影響もあり完投数が減少。村田氏は「沢村賞の中には先発完投、チームの柱であること、そしてファンに夢を与えていくことがある。来年は(投手全体で)意識を変えないと」と話し、3年前に10完投を含む7項目を完全制覇した巨人菅野の3度目の戴冠に期待した。【広重竜太郎】